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「理想は走攻守のすべてで一流」昨季までわずか“4”だった男が盗塁王へ爆走中! プロ3年目・ロッテ高部瑛斗(24歳)はなぜ覚醒した?
posted2022/08/30 06:00
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千葉ロッテマリーンズ取材班Chiba Lotte Marines
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Chiba Lotte Marines
パ・リーグ盗塁王争いを独走するのは、プロ3年目・高部瑛斗外野手(24歳)だ。昨季までの2年間で通算38試合に出場してわずか4盗塁だった男が今シーズン、一気に開花した。
国士舘大学からドラフト3位で千葉ロッテマリーンズ入り。東都2部リーグ最多記録となる通算129安打などの実績を携えてのプロ入りだったが、ここまでのプロ野球人生が順風満帆であったかと言われると決してそうではない。むしろ、挫折の連続だった。
プロ1年目はいきなり春季キャンプで試練に見舞われた。プロ初実戦となった石垣島春季キャンプ中の2月8日、台湾・楽天モンキーズ戦にて「2番・右翼」で先発出場すると2安打3打点1盗塁の大活躍で首脳陣にアピール。初回1死から左前打で出塁すると次打者の初球に二盗を成功させる、同点の2回2死満塁のチャンスでは左中間へ走者一掃となる決勝三塁打を放った。しかし、この打席でスイングの際に右手を痛めた。沖縄県石垣市内の病院で右手有鉤(ゆうこう)骨骨折と診断された。
「ポキンという音が聞こえて手が動かなくなりました。アレっと思いました」
それは高部にとって野球人生で初めて経験する大きな怪我だった。翌日にキャンプ中のチームを離れ、一人、緊急帰京。右有鈎骨骨折骨片除去の手術を受けた。
「実戦に入って、スイッチが入ったタイミングで強制的にスイッチを切られた感じ。悔しいというか残念だった」
最高のアピールをしてスタートを切ったはずが、まさかの出遅れ。たった一人で誰もいない寮に戻った時の静けさ、寂しさは忘れられない思い出だという。
大卒同期の活躍「その場にいないことが悔しかった」
結局、高部はその怪我が響き、開幕は二軍スタート。リハビリに専念する間、同期で同じ大卒の新人選手たちは一軍でアピールを続けた。ドラフト2位の佐藤都志也捕手は、6月27日のオリックス・バファローズ戦でプロ初ヒットをサヨナラ打という劇的な形で決めた。焦る気持ちを必死で抑えていた当時の思いを振り返る。
「結果を出せないことも悔しかったけど、そういう場に自分がいれないことも悔しかった。一軍で経験をしないと分からないことは多いですから」
夜遅く、寮の駐車場で汗だくになりながら何度もショートダッシュを繰り返す。身体を動かすことで悔しさを消化する日々。それでも高部は前を向き続けた。