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熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「有能か以前に人間として…」「軍事政権と取引、スポンサーからの“賄賂”で私服を肥やす」ブラジルサッカー“元祖・極悪会長”のやり口
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byBuda Mendes/Getty Images
posted2022/08/24 11:00
2011年のアベランジェ氏。良くも悪くも“スポーツ協会の会長”という存在を象徴するような存在だ
このように、アベランジェはフットボールの世界的な普及と発展、強化に貢献する一方で、極端な商業化へ舵を切り、このスポーツを贈収賄が横行する醜い世界へ変えてしまった。
妖怪アベランジェ本人にインタビューしたときの記憶
筆者は、2002年W杯の開催国を巡って日本と韓国が激しく争っていた1995年、リオのCBFの事務所でアベランジェにインタビューした。
当時、79歳。面長の顔に深い皺が刻まれていたが、この年齢にしては異様なほど血色が良く、強烈なオーラを放っていた。「得体の知れない妖怪」という印象を受けた。
「日本と韓国の共同開催はありうるのか」と尋ねたところ、「それはない。日本の単独開催だ」と言い切った。
ただし、その後、欧州各国が日韓共催へ傾き、その流れを押しとどめることができなかった。最終的に、彼自身が日本へ日韓共催案を押し付け、日本がこの提案を受け入れざるをえなくなって決着した。以後、アベランジェの権力に陰りが見られるようになり、1998年に会長を退任。名誉会長の座についた。
しかし、その後、会長時代の不正行為の数々を糾弾され、2013年に名誉会長の職から退くことで辛うじて身をかわした。そして、2016年8月、自身もIOC理事として開催誘致に貢献したリオ五輪の閉幕を見届けてから、100歳で大往生を遂げた。
フットボールの発展に寄与したのは確かだが
CBF会長として17年間、FIFA会長として24年間、計41年間という途方もなく長い期間、両団体でトップを務め、その職務を通じてアヴェランジェがブラジルと世界のフットボールの発展に寄与したのは間違いない。
その一方で、私利私欲に走ってこれらの組織を私物化し、食い物にしたことに強い怒りを覚える。
しかし、彼は悪運が強い。フットボールの世界における汚職のノウハウを“発明”し、それを長年に渡って世界的な規模で実行した極悪人でありながら、生涯を通じて一度も塀の中に落ちなかった。
第2回ではアベランジェ後を引き継いだ“軍人出身会長”やアベランジェの娘婿について記していく。
<#2につづく>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。