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W杯の設備費用は総額1兆4500億円!?
開催国の巨大な負担と、潤うFIFA。
posted2014/06/12 16:30
text by
並木裕太Yuta Namiki
photograph by
Getty Images
1兆4500億円
(ブラジルがW杯の施設整備などに投じた金額)
4年に一度のサッカーW杯の開幕が目前に迫ってきました。言わずもがなですが、W杯は国際的な知名度や注目度が極めて高く、オリンピックに匹敵する一大スポーツイベント。当然、大会の実施にあたっては多額のマネーが動くことが想像されます。
開催国決定の際の喜びようを見ると、大会の招致成功には多大な経済的メリットが伴うのかと思いきや、現在伝えられるブラジルの現状は悲惨としか言いようがありません。交通機関の運賃は値上がりし、病院や学校に投じられるべき予算も抑えられ、「サッカー王国」の国民が連日、政府を批判するデモ行進を続けているのです。
端的に言えば、国民の怒りの矛先が向けられているのは、開催国としての役割を果たすためにブラジルが行なった巨額投資です。今回、12のスタジアムが大会に合わせて新設・改築されることとなったわけですが、そのために必要なコストは当初、10億ドル(1000億円、1ドル=100円で計算)以下とされ、しかもその大部分は国のお金ではなく民間の資金によって賄われると見込まれていました。
スポーツ省の強気な発言と、厳しい現実。
ところが、計画が進むにつれてコストは増加の一途をたどります。昨年の時点で、スタジアム建設・改築コストの見込み額が35億ドル(3500億円)に修正され、2010年大会時に南アフリカが施設整備にかけた費用の3倍以上にまで膨張。周辺の交通機関などのインフラ整備も含めたトータルコストは145億ドル(1兆4500億円)に達すると見られています。
さらに2016年のリオ五輪に向けて、少なくとも130億ドル(1兆3000億円)の投資が追加されるというのですから、国民が黙っていられないのも無理はありません。
それでは、これだけのコストに見合ったリターンをブラジル国家は得ることができるのでしょうか。
スポーツ省、アルド・レベロ大臣の発言は強気です。W杯によって同国にもたらされる経済効果は、2019年までGDPを年率0.4%押し上げることから900億ドル(9兆円)と試算。W杯と五輪によって、2014年末までに360万人もの雇用が創出されるというのです。
しかしこれらの政府による試算は、医療や教育への予算が足りない状況でスタジアム建設を優先させたいがための自己弁護の側面が大きく、楽観的な数字と言わざるを得ないでしょう。ちなみに2020年の東京五輪開催による経済効果は、東京都の試算では約3兆円となっています。