オリンピックへの道BACK NUMBER
羽生結弦はなぜ“スケーター達からも”愛されるのか? 仲間とのハグ、語り合った“リスペクト”「これまでの交流は、羽生の財産でもある」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2022/08/14 11:04
今後はプロスケーターとして、新たな道を歩む羽生結弦。振り返ると、多くのスケーターたちに愛され、切磋琢磨したこれまでの日々があった
羽生、宇野、フェルナンデスが抱擁した“あのシーン”
2018年平昌五輪もまた、印象的だった。試合のあと、リンクサイドで金メダルの羽生と銅メダルのハビエル・フェルナンデスが抱擁し、さらに銀メダルの宇野昌磨が加わった。3人は互いを称えるように、涙と笑顔で一つのかたまりとなっていた。
記者会見では、フェルナンデスが羽生についてこう語った。
「彼はまさに、すべてをまとめる力を持っています。悪いときを、よいときに転換する力があります。みんなが学べるところを持っています」
羽生とフェルナンデスは、カナダ・トロントのクリケットクラブに身を置き、日々の練習をともに過ごしてきた仲だ。リンクの外では友達という言葉さながらに、切磋琢磨してきた仲間への気持ちが込められていた。
羽生が語っていた“他のスケーターたちへの敬意”
敬意は、一方向ではなかった。同じ会見で、羽生はフェルナンデスらについて語っている。
「いろんな方が僕のスケートが素晴らしいとか、僕が切り拓いたと言ってくれますけど、僕がこうやっていろんなジャンプを跳ぼうと思ったのは間違いなく、ボーヤン・ジン選手の(4回転)ルッツを見て思ったことだし、ループを跳ばなきゃいけないと火がついたきっかけはハビ(フェルナンデス)の素晴らしい完成度の高い演技にありました。日本でもうかうかしていられないと思ったのは、宇野選手の存在があったから」
「ハビエルについては、彼がいなかったら……まずカナダに行かなかったし、彼がいたから僕は(4回転)サルコウも(4回転)トウループも安定してプログラムに入れるようになりました。彼がいなかったら辛いトレーニングに耐えることはできなかったと思います」
このようにフェルナンデス、宇野らを称える姿があった。
オリンピックチャンピオンになったことから生まれるゆとりだっただろうか。そうではないことは、優勝しなかった大会後の言葉に表れている。