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「ハニュウは別世界に行った」人気コラムニストが語る、羽生結弦の“アメリカでの可能性”「この国でフィギュアはスポーツというよりも芸術」
posted2022/08/26 11:00
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph by
Getty Images
米国のスポーツコラムニスト、フィル・ハーシュ氏が独占取材に応じ、羽生結弦に対する思いなどを語った。
アメリカの大手有力紙、シカゴトリビューンで28年間オリンピックスポーツを取材し、4度ピューリッツァー賞候補になったハーシュ氏は、敏腕のスポーツコラムニストとしてこれまで20回のオリンピック(夏季8回、冬季12回)を取材してきた。現在はNBCオリンピックチャンネルなどで、時に辛口ながらも鋭い視点でフィギュアスケートのコラムを執筆し続けている。
まず羽生のプロ転向宣言を聞いて、どう感じたのか。
「彼はすでに比べるものがないほどの実績を築き上げて、同時に多くの負傷をしてきた。過去に自分が成し遂げた演技以下のものでは本人が満足できないというのは理解できますし、正しい判断だと思います。日本では彼は絶大な人気があるようですし、本人が望む限り長いプロ活動を続けていけることでしょう。ブライアン・ボイタノ(1988年カルガリーオリンピックチャンピオン)は40代の半ばまで、ショーに出演していました」
羽生は黒海のほとりで金メダルを誓っていた
そう語るハーシュ氏はフィギュアスケートを長年取材してきたものの、フィギュアのみを専門に追ってきたわけではない。初めて羽生を生で取材したのは、2014年ソチオリンピックでのことだったという。
「ハニュウはあそこで素晴らしいSPを演じました。残念ながらフリーでは誰も良い演技ができなかったけれど、フィギュアスケートは総合で順位が決定します。その後コーチのブライアン(・オーサー)と話をしたのですが、ハニュウはその1年前に(GPファイナルで)ソチに来た時に、黒海のほとりを散歩しながら『1年後にここに戻ってきて、絶対に金メダルをとる』と言ったそうなのです。結局、彼は望んだ結果を出すことができた訳です」
「ハニュウは別な世界に行ったかのようでした」
これまでの羽生の演技で、最も印象に残っているものは何だろうか。
「ボストン(2016年世界選手権)のSP、ヘルシンキ(2017年世界選手権)のフリーなどが印象に残っています。(SPとフリーの)両方揃えたという意味においては、平昌オリンピックの演技が良かったですね。もちろん彼の最高の演技は、2015年NHK杯とその後のGPファイナルで見せたものでした。残念ながら、私は現場にいなかったのでストリームでみました。あの2つの大会でのハニュウは、他の選手とは別な世界に行ったかのようでした」