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羽生結弦はなぜ“スケーター達からも”愛されるのか? 仲間とのハグ、語り合った“リスペクト”「これまでの交流は、羽生の財産でもある」
posted2022/08/14 11:04
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Asami Enomoto/JMPA
7月19日、羽生結弦がプロフィギュアスケーターとしてスタートを切ることを発表して以降、反響がやむことはない。
海外のスケート界も同様で、ネイサン・チェンは「同じ氷上に立つことができたのは人生における誇りです。このスポーツのためにしてくれたことにほんとうに感謝しています。きっとこれからも、このスポーツのためにしてくれることに感謝しています」とコメントを述べている。エフゲニア・メドベデワ、アリーナ・ザギトワ、ナム・グエンらもまた、祝福の言葉を寄せた。
あらためて羽生の存在感と影響力の大きさを実感させられる。さまざまな大会などでの光景を思い起こすとともに、やまない反響には「敬意」という一点が通底しているように思える。
チェンにとって羽生は「神様のような存在です」
例えば、2019年12月に行なわれたグランプリ・ファイナル。今年2月の北京五輪で金メダルを獲得したネイサン・チェンが優勝し、羽生は2位で終えた。
チェンは試合後の会見で、強くなった理由を尋ねられ、こう答えた。
「結弦がいたことにあります。いつも僕の前を進んでいて、もっと努力を続けていかなければならないと考える進化を見せてくれています。神様のような存在です」
羽生が初めてオリンピックの金メダルを獲得した2014年のソチ五輪のとき、チェンは14歳、シニアに上がるよりも前だった。そのときの思いにも触れた。
「男子は4回転1本が普通だったのに、4回転2種類を入れていました。すごい選手だ、僕も大きくなったら常識を覆す選手になりたい、と強く印象付けられました」
それ以外でも羽生にしばしば言及したが、チェンの胸にあったのは、羽生という先駆者への憧れと、だからこそ目標にして励んできたこと、そして先に行く者への敬意にほかならなかった。