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日本代表のニュータイプMF藤田譲瑠チマ20歳… 小学生の頃から光った才能とは「ジョエルは人間が大好き」「景色を変えなさい」
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph byKazuhito Yamada/Kaz Photography
posted2022/08/05 06:00
E-1選手権で日本代表デビューを飾った藤田譲瑠チマ。日本のMF像を変えうるスケール感がある
じつに面白いタマである。興味を覚えた私は、源流を辿って藤田がジュニア年代を過ごした町田大蔵FCを訪ねた。1981年に創設された、町田市立大蔵小学校を拠点に活動する街クラブだ。
コーチの名を、市川雄太という。
「ジョエルは人間が大好き。いろんな人と…」
東京Vのアカデミー支部、元読売クラブの土持功が代表を務めるヴェルディS.S.相模原の出身で、必然、指導哲学はその流れを汲んでいる。
「ジョエルは人間が大好き。いろんな人と話をしたがり、相手の言葉に耳を傾け、理解力も高かった。僕がこうしたらいいんじゃないかとアドバイスすれば、すぐに吸収してそれ以上のことをやってみせた。あの素直さですよね。それがいまの彼をつくったんだと思います」
往時を懐かしみながら市川は言う。
父からナイジェリア人の血を受け継ぐダブルとくれば、飛び抜けた身体能力が典型的なイメージだろうが、藤田には当てはまらない。球際の争いは抜群に強かった。だが、スピードや瞬発力の勝負では分が悪い。
この先、ステップワークが重要になると見た市川はそれに特化したトレーニングを課し、「前にいけなくなったら景色を変えなさい」と伝え、藤田は足裏で方向転換する身のこなしを体得する。やがてプロの世界に足を踏み入れた藤田を支える軽妙なフットワーク、素早くアングルを変える所作やターンの巧さはこの時期に種が蒔かれたものだ。なるほどと合点がいった。
東京Vのアカデミーにおける熾烈な競争を知る市川だったが、「ジョエルだったらあの厳しい環境のなかで揉まれてもやっていける」と信じて送り出した。その見立ては正しかった。
プロ1年目の自己採点は「60点くらい」
プロ1年目のシーズン最終節を前に、藤田は言った。
「最初はチームの足手まといで迷惑をかけてばかりでした。開幕戦、周りの人たちは『なんで、あいつがスタメンなんだ?』と思われたでしょう。試合を経験するごとに成長できて、少しはみんなの役に立てたかなと。(永井秀樹)監督が使い続けてくれたおかげです。感謝しています。(トータルの自己評価は)そんなに高い点数は付けられないですね。60点くらい」
また、将来の展望については次のように述べている。