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松田直樹の命日に思う…横浜F・マリノス角田涼太朗23歳がどこか、かぶるのはナゼ? 筑波大の卒論テーマは「センターバック」
posted2022/08/04 11:20
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Y.F.M/BUNGEISHUNJU
横浜F・マリノスのセンターバック、角田涼太朗を眺めていると、どこか松田直樹がかぶる。
松田は右利き、日本人離れした身体能力を誇り、プレーそのものが熱すぎる。一方の角田は左利き、日本人離れまでの身体能力とまではいかない分、読みと駆け引きで勝負する。プレーそのものも冷静である。
どこがかぶってんねん!とツッコまれそうだが、共通点もあるんです。
松田は左足のキックがうまかった。身体能力もさることながら、実は読みと駆け引きの人でもあった。対人の強さは逆に角田から感じるところもある。それに前橋育英出身、サイズ感(身長、体重はほぼ同じ)、マツダとツノダという名字の響き、そして松田が「3」なら、角田は「33」……。微妙に何かが重なっている。
「3」と「33」の邂逅はニアミスに
縁を感じないではいられない。
2009年正月、松田は地元・群馬のサッカーイベントに出席した後の食事会で前橋育英時代の恩師である山田耕介監督に対して「先生、高校選手権勝たなきゃダメだよ」とハッパを掛けていた。その言葉を胸に、指揮官は2017年度大会でチームを悲願の初優勝に導いている。そのときの中心メンバーの一人が角田である。
練習中に倒れた松田が帰らぬ人となってはや11年が経つ。命日の8月4日を前に、古巣のF・マリノスでは7月30日のホーム、鹿島アントラーズ戦を前にOBマッチが開催され、松田の名前も場内アナウンスされて在りし日の雄姿がビジョンに映し出された。天国からピッチに立っていた。
角田はOBマッチ後のアントラーズ戦にベンチ入りしたものの、出番が訪れなかった。同じ日のピッチにおける「3」と「33」の邂逅は“ニアミス”に終わった。まだレギュラーを張るまでには至っていない。だが彼の存在は、クラブの新たな希望でもある。
角田涼太朗、23歳。
筑波大4年生だった昨年夏に退部して、内定先のF・マリノスに半年繰り上げて加入した。世代別の代表にも選ばれてきた即戦力候補ではあったが、分厚い選手層の壁を破れずに昨シーズンはわずか1試合に出場にとどまっている。
彼はこう振り返る。