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松田直樹の命日に思う…横浜F・マリノス角田涼太朗23歳がどこか、かぶるのはナゼ? 筑波大の卒論テーマは「センターバック」 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byY.F.M/BUNGEISHUNJU

posted2022/08/04 11:20

松田直樹の命日に思う…横浜F・マリノス角田涼太朗23歳がどこか、かぶるのはナゼ? 筑波大の卒論テーマは「センターバック」<Number Web> photograph by Y.F.M/BUNGEISHUNJU

横浜F・マリノスの期待の若手センターバック角田涼太朗(左)と8月4日に命日を迎えたマリノスのレジェンド松田直樹(右)

「あれだけ試合に絡めない日々が続くことはそれまで多くなかったので、メンタル的にも自分を保ちながらやり続けることが難しい時期もありました。ただ、やり続けなければ何も始まらないし、そこで終わり。気持ちを切らすことなくやれたというのは自分のなかでも経験としては大きなものでした」

 フォワードに負けないスピードを誇るチアゴ・マルチンスを間近にしたとき、「これは凄い」と圧倒された。畠中槙之輔、岩田智輝、實藤友紀らとの競争は刺激でもある一方で、打ちのめされそうになったこともある。

「あきらめて終わりにしたくはない。周りはトップクラスの人たちばかりですけど、このレベルでやれないとも思っていなかった。いろんな選手がいるなかで自分のスペシャリティな部分で勝てるようにしなきゃいけないと考えました」

卒論はセンターバックがテーマ

 スペシャリティな部分とは、読み、駆け引き、ポジショニングを指す。相手よりも一歩先に反応することで優位に立てる。そのためには日ごろのトレーニングと、スタンドから眺める試合こそが何よりの教材であった。自分がピッチに立ってプレーしている感覚で「自分ならどうするか」を常に考えるようにした。

 卒論はセンターバックをテーマにしている。シーズン後のオフはその時間にガッツリ充てて、完成させている。サッカーについて、センターバックについて、自分のプレーについて向き合い続けた。

 その成果は今シーズンにあらわれる。

 チアゴがニューヨーク・シティに移籍し、角田と同じ左利きのエドゥアルドが加入したなか、3月6日のホーム、清水エスパルス戦で初先発のチャンスを得る。

 クレバーなディフェンスを披露する彼がいた。ハイラインの裏を狙ってくるパスをことごとく処理してピンチの芽を摘んでいく。初先発に「前日もそわそわして緊張していた」と告白するが、熟練のセンターバックのごとく落ち着き払っていた。クリーンシートを達成しての勝利に角田の活躍は外せなかった。

「初めてのスタメンでしたから、結果にこだわりたかった。危ないシーンがなかったわけではないですけど、ディフェンダーとして無失点で終われたのは自信になりましたし、ブレることなくやってきて良かったなとは思いました」

【次ページ】 あれはうまくいきすぎましたね(笑)

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