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「日本のバスケットは、世界で通用します」いきなりドイツでMVPに選ばれた女子バスケ・安間志織が海外で実感した日本人の「強み」
posted2022/08/02 17:02
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Eisvögel USC Freiburg
優勝だけじゃなく、MVPにも選ばれた
プレーオフは8チームが出場、準々決勝は危なげなく通過したが、準決勝のケルターン戦は大接戦に。初戦は3点差で勝ち、第2戦は第3Qを終わって8点のビハインドをひっくり返して決勝進出を決めた。
決勝の相手はレギュラーシーズン1位のラインランドで、先に3勝すれば優勝。
初戦は、第1Qに9対26と試合の入りに失敗し、星を落とした。しかし、第2戦からは安間がチームを引っ張った。第2戦は4点差、第3戦は6点差をものにして王手をかけると、第4戦は相手を圧倒。
4月30日、ついにフライブルクが頂点に立ち、安間はMVPに選ばれた。
「勝ったんです。ドイツに来た時は、優勝できるだなんて1ミリも思っていませんでした。なんたって、どこで試合をしていたのか知らないくらいだったんですから(笑)。みんなが喜んでくれたのが本当にうれしかった。それに、MVPまで獲得できて――MVPが取れたのもみんなのおかげです。英語が話せない日本人によくついてきてくれたなって」
「シオリから学ぶことが多かった。ありがとう」
バスケットボールに限らず、日本人が海外でプレーする時に直面するのが、国籍の違う選手たちとのモチベーションの濃淡だ。「もっと、こうしたらいいのに……」と日本人が思っても、それを伝える言語力が備わっていないことも多く、コミュニケーションを諦めてしまうのだ。そしてその「諦め」はパフォーマンスを徐々に蝕んでいく。
今回、安間はフライブルクにとことんコミットした。1年だけだが、「自分のチーム」という意識が強烈に芽生えていた。
「フライブルクが日本人を受け入れたのは初めてのことで、それ自体がありがたかったですし、そのなかで私が窮屈にならないように最大限の配慮をしてくれました。たとえば、チームのトレーニングだけでは足りなかったので、いつでも使えるジムを用意して欲しいとリクエストを出したら、体育館のすぐ近くのジムを用意してくれたんですよ。これだけサポートしてくれてる分、絶対にチームのためにプレーしたいと思いました。だから、自分のため、チームのため、そしてチームメイトと勝つためにプレーしてました」
優勝はチームメイトとの別れの時でもあった。