後藤とのトレードでオリックス入りした石岡は、入団会見を行ったその日に代走で初出場すると、翌日には1番・レフトで先発出場し、2安打で勝利に貢献。後藤は複雑な思いでいるのでは、と思いきや、「全然、全然！」とあっけらかんと打ち消した。

「『おー！ 石岡やったなー』って感じでしたよ。なんとも思わないし、むしろ頑張れって思う。すぐに（一軍に）上がってすぐ結果出して、すごいなとは思いましたけど、いいなーとか、うらやましいなーという気持ちは一切ない。それがトレードの意味だと思うし、僕も腹をくくっていたから。オリックスでの僕の立ち位置はすごくわかっていたので。今はもう中日にいるんで、オリックスと比べたり、オリックスのことを考えたりするのは違うと思うから」

　そう、駿太はこういう人なんだ。

　その後藤も、7月17日に一軍に昇格すると、その日の阪神戦で移籍後初安打を放つ。そして翌日のDeNA戦では、3番・センターで先発出場。オリックスでは一度もなかったクリーンアップでの先発に、福良GMは「びっくりしたわ」と笑った。後藤本人も驚いたという。

「プロ野球人生で初めてだったので、プレッシャー感じちゃいました（苦笑）」

　その日、結果は出なかったが、中日では見られ方や立ち位置が違うということ。可能性は広がる。

　時に自分の弱さもさらけ出しながら、思いを率直に語ってくれる後藤は、取材していて魅力的な選手だ。もがきながらも垣間見せるその人柄と、華のあるプレーで、ファンにも愛され続けた。まだ29歳。新天地で努力と才能が実を結ぶことを誰もが願っている。

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