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村上宗隆19歳「今はチャンスをもらっているだけで」3年前、ヤクルト首脳陣が語っていた若き大砲の可能性《二冠独走&ASセ最多得票》
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph byTokyo Yakult Swallows
posted2022/07/25 17:01
2022年、三冠王も狙える圧倒的な成績を残している村上宗隆。初めて4番に座った3年前から、誰もがそのずば抜けた潜在能力を認めていた
「今は単にチャンスをもらっているだけで」
ヤクルトは開幕ダッシュに成功し、一時は単独首位となったものの、5月に入るとチーム成績は急降下。リーグワーストタイ記録となる、まさかの16連敗という屈辱にまみれた。
たとえプロ2年目の10代であろうとも、4番という重責を任された村上の責任は軽くはない。交流戦開幕時点で、チームトップとなる14本のホームランを記録し、打点部門では広島・鈴木誠也、巨人・坂本勇人とトップ争いを演じている。それでも、チームに白星をもたらすことができなければ、「4番失格」の烙印を押されても仕方ない。すでに4番から外れている村上も、自身の役割の重さを自覚している。
「自分の場合はレギュラーとして試合に出ているわけではなく、今は単にチャンスをもらっているだけで、“使ってもらっている”という段階。早く本当のレギュラーになって、チームに貢献したいです」
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ファーストでも、サードでも、重要な場面でのエラーは目立つ。また、記録に残らないミスも多い。それでも、右にも、左にも大飛球を放つことのできる長打力は、誰も真似できない大きな魅力だ。多少のミスに目をつぶってでも、スタメンに村上を起用したくなる指揮官の気持ちはよくわかる。
かつて、ヤクルトに黄金時代をもたらした野村克也はしばしば言っていた。
「4番とエースは育成することはできない」
まさに、久々にヤクルトに現れた「天性の4番打者」こそ、村上宗隆なのである。
宮本慎也コーチはあくまで慎重
プロ1年目の昨年、村上はファームで打ちまくった。打率.288は3位、本塁打17本、打点70はともにリーグ2位で、出塁率.389は堂々1位を記録した。こうした結果を踏まえて、「そろそろ村上選手は一軍で見られそうでしょうか?」と尋ねても、小川監督の答えはいつも一緒だった。
「今年は二軍でじっくりと育てるつもりです。まだまだ焦る必要もないし、まだまだ学ぶべきことも多いですから」
指揮官と同様に、宮本慎也ヘッドコーチも村上に対しては慎重な姿勢を崩さない。