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村上宗隆19歳「今はチャンスをもらっているだけで」3年前、ヤクルト首脳陣が語っていた若き大砲の可能性《二冠独走&ASセ最多得票》
posted2022/07/25 17:01
text by
長谷川晶一Shoichi Hasegawa
photograph by
Tokyo Yakult Swallows
今季91試合を終えた時点で打率.312、33本塁打、89打点と圧倒的な成績を残し、いまや誰もが認める“真の4番”へと成長した村上宗隆。7月26、27日に行われるオールスターでセ・リーグ最多得票を集めた若きスラッガーが初めて4番に抜擢された2019年、当時19歳の大器をヤクルト首脳陣はどう評価していたのか。有料公開されていたSports Graphic Number 980号(2019年6月13日発売)の記事『<19歳の大器>村上宗隆「真の4番となる日まで」』を特別に無料公開します。
その瞬間、東京ドームにどよめきが起こった。5月12日、試合前のスタメン発表。場内に「4番ファースト、村上」のコールが響き渡ったからだ。10代の選手が4番で先発するのは、当時西武に在籍していた'87年の清原和博以来のことだという。平成時代には一度もなかった「10代の4番」が、令和改元早々に実現したのだ。後日、小川淳司監督に起用の意図を尋ねると、指揮官の頬が緩んだ。
「単に故障者が相次いだので他に選手がいなかっただけです。村上には十分にその実力はあると考えた上での起用でした」
確かにこの日の巨人戦は青木宣親、山田哲人、バレンティンと主軸3人がコンディション不良で欠場するという緊急事態。その中での窮余の策だった。しかし、それから約2週間後の5月29日の広島戦では青木も、山田も、そしてバレンティンもベンチ入りしているにもかかわらず、村上が4番を務め、初回にはライトスタンドに突き刺さる豪快な第14号スリーランを放っている。
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小川監督に「多少のミスを補って余りある打撃ですね」と水を向けると、指揮官の表情は引き締まり、その口調は一転する。
「いや、余りあるということはないですよ。彼の長打力は本当に魅力的。それでもエラーやミスによって、試合の流れは大きく変わりますからね。結果論で失敗を責めることはしないけど、もっともっと(守備の)練習しろよ、とは何度も言っています」