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佐々木朗希がオールスターに“特別な思い”を抱く理由…10年前、仮設住宅からバスで2時間半かけて向かった岩手県営野球場の外野席
posted2022/07/25 06:01
text by
千葉ロッテマリーンズ取材班Chiba Lotte Marines
photograph by
Sankei Shimbun
佐々木朗希は子どもの頃に一度だけオールスターをスタンド観戦したことがある。
2012年オールスター第3戦は、東日本大震災復興支援の目的で岩手県営野球場にて行われた。当時、小学校5年生。津波の被害を大きく受けた岩手県沿岸部の少年野球チームは招待を受け、仲間たちと小学校に集合をして岩手県大船渡市からバスで2時間半かけて球場入りした。
「なかなか地元の岩手でプロ野球を見る機会はなかったので、楽しみにしていた」
印象深いのは試合前の練習だという。外野で見ていると目の前でジャイアンツの内海哲也投手(現ライオンズ)がダッシュを繰り返していた。間近で見るプロ野球選手に目を輝かせ、「遠い存在だったプロ野球選手が目の前で練習をしている姿が印象に残っている」と、今も記憶が鮮明だ。
打撃練習のボールが飛んできた。ホームランボールも獲れなかったが近くに落ちた。外野を守る選手たちはファンサービスの一環でイニングの合間にボールを投げ込んでくれた。試合途中には花火が打ちあげられ、盛岡さんさ踊りがグラウンドで実演された。カクテル光線に照らされ躍動する選手たち。夏の球宴は華やかだった。
帰りもバスに揺られ2時間半。夜が更けた時間帯に自宅としていた仮設住宅に戻ったが目は冴えわたったままだった。
2001年、黒木知宏以来となる「1位」
そして月日が流れ、その少年はオールスターファン投票1位となった。選手間投票でも1位。マリーンズから先発部門ファン投票1位は2001年の黒木知宏氏以来の快挙である。
今度は自分が子どもたちに思い出を提供する側となる。それも、この球宴の主役。剛腕が繰り出す160キロ超えの速球は、もっとも注目を集めていると言えるだろう。
しかし、キャリアを振り返ってみればあの当時は、キラキラと輝く道筋が用意されているなどとは思いもしなかった。