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「地球に生まれてよかったー」名言も誕生…世界陸上キャスター・織田裕二はなぜ愛されたのか? 陸上関係者の証言「練習とか、一生懸命見ていた」
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2022/07/25 17:00
1997年から25年にわたり世界陸上のメインキャスターを務めてきた織田裕二
今大会で話題になった“サニブラウンとの会話”
今回のオレゴン大会でそうした織田らしさを象徴するのは、男子100mではなかったか。サニブラウンが世界選手権では日本初となる決勝進出を果たし、ファイナリストとなったレースだ。
織田はコメントしながら涙が止まらず、何度もぬぐった。また、サニブラウンとのインタビューでは「最初に会ったときの約束覚えてる? 16歳のとき、初めてスタジオに遊びに来てくれて。そのときテレビカメラのないところで『世界一になります』、俺にそう言ったんだよ」と語りかけた。そこには無機質ではない言葉があった。
大会を重ねる中で、メインキャスターとしての取り組みに修正を加えることもあっただろう。それでも、根幹ではぶれずに自分らしさを打ち出し、突き進んだからこそ、25年にわたって務めて惜しまれるまでになり、世界陸上の認知度向上に貢献することもできたのではないか。
織田、そして中井は今大会をもって卒業ということになるが、アナウンスされたあと、2025年の世界選手権が東京で開催されることが発表された。それを受けて継続への期待も出ているようだが、『踊る大捜査線』などの作品と並び、もう1つの代表作ともなるところに達して、まずは25年にわたる歴史を閉じることになる。