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「あの1球で僕は目が覚めた」甲子園決勝ノーヒットノーランの松坂大輔が「間違いなくヒットだ」と思った“1回表の2球目”
text by
鈴木忠平Tadahira Suzuki
photograph byKYODO
posted2022/08/22 06:01
24年前の8月22日、甲子園決勝の舞台でノーヒットノーランを達成した松坂。本人、チームメイト、対戦相手、審判の証言で「奇跡の決勝」を振り返る
松坂くんが僕の方を見て、ニコッとしたんです
《一塁ベースの3mくらい上を通過していったんですが、そこを通った時に打球が白線(一塁線)の内だったか、外だったか、そういう判定です。私にはボール半分、つまり3cm外だったように見えた。だから『ファウル』と言ったんです。でもね、私は一塁ベースの4、5m後ろに立っているわけです。そこから見て、3mの空中にあるボールが3cm内か、外か、なんて極めて不確定なものですよ。あれが9回に飛んできていたら大変だった(笑)》
清水が両手を上げた瞬間、一塁ベースカバーに走ってきた松坂と目が合った。
《松坂くんが僕の方を見て、ニコッとしたんです。彼には人を惹きつける、どこか可愛いところがありました》
清水は世の人が「怪物」と呼ぶ17歳に対して、どうも、そうとは思いきれない印象を抱えていた。それは東京六大学の審判員として、法大時代の江川卓が投げたゲームを裁いたことがあるからかもしれない。
<後編へ続く>
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