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〈今季J1出場ゼロの19歳A代表初陣〉鈴木彩艶と西川周作36歳…「日本代表クラスが2人」森保監督も認める浦和GKのハイレベルな背景は?
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2022/07/20 17:23
A代表デビューを飾った鈴木彩艶(19)。W杯メンバー経験のある西川周作(36)との浦和での競争が、彼を強くする
「(彩艶は)レッズでの位置付けはセカンドGKかもしれないが、西川周作もここにいておかしくない選手。レッズには日本代表レベルのGKが2人いて、今回は彩艶を選んだ」
森保監督は選考理由についてこうも語ったが、その言葉には納得がいく。
レッズのハイレベルな正GK争いの背景には、「レッズをGK大国にする」という西野努テクニカルダイレクターの考えがある。そこで今季、理論派として知られるスペイン人のジョアン・ミレッGKコーチを招聘し、改革に乗り出した。
「レッズをGK大国に」スペイン人コーチの指導法とは
ジョアンGKコーチの特長は、GK指導のメソッドを体系化していることだ。
なぜそこに立つのか、どうキャッチするのか、どのタイミングで飛び出すのか……。まずは選手に理論を叩き込み、ポジショニングやステップワーク、体重移動、キャッチの際の手の形やフォームといった基礎から一つひとつ論理的に積み上げていく。そしてパンチング、ハイボール対応、横っ飛びの仕方へと進むが、その先には大事なポイントとして、ミスをしたらどうするか、というところまで指導がある。
「いかに無駄なステップを踏まずにいいポジションに入るか、という話を徹底的にされている。頭を働かせて、考え方を少し変えて、ジョアンコーチに教えてもらえるものを吸収している。非常に面白く感じている」
西川が新コーチの指導法についてそう語れば、彩艶も手応えを感じている。
「なぜ、そのミスを犯したのか、次にどうすれば同じミスをしなくなるのかが分かるようになりました。理論を学んで、立ち返る場所ができたことも大きいです」
西川が危機感を持った「高3の彩艶」のスケール
今季、レッズはここまで20失点とリーグ2位の少なさを誇り、西川は個人としてJ1通算170試合無失点の歴代最多記録を樹立した。ジョアンGKコーチのもとで繰り広げられるハイレベルなポジション争いが、堅守を築き上げていると言っていい。
西川は昨シーズン、ルーキーだった彩艶にポジションを譲った時期がある。その後、定位置を奪い返したが、実はその1年半前、2020年のプレシーズンキャンプで高校3年生になる彩艶と同部屋になったとき、16歳下の青年に遅かれ早かれポジションを脅かされることを予感したという。