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2年で45億円超の爆買い…「ウマ娘」で話題の藤田晋オーナーの狙いとは? セレクトセールの落札馬リストから見えてきた“綿密なプラン”
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph byAFLO/Photostud
posted2022/07/17 11:01
2年連続で20億円以上の大金をセレクトセールに注ぎ込んだ藤田晋オーナー。今春にはジャングロで重賞を制し、馬主としての今後に注目が集まっている
昨年比で牝馬が激増…生産に乗り出す可能性も?
つづいて、牝牡のバランス。
昨年落札した牝馬は、18頭のうち3頭しかいなかったのに、今年は18頭のうち、半数以上の10頭に増えている。
特に当歳馬で良血牝馬の落札が目立っているのは、将来の繁殖入りも見据えてのことだろう。マニーズオンシャーロットの2022のように、非サンデー系なので、サンデー系の優秀な種牡馬を配合できる馬もいれば、サンデー系でも、サンデーの4×4や、3×4のインブリードなら可能な牝馬もいる。
将来サラブレッド生産牧場を開場するプランがあるとしたら、生産馬の売却益で回していくマーケットブリーダーとして十分やっていけそうなラインナップだ。さらに、これらの牝馬が優れた競走成績を残せば、牝系の価値はさらに上がる。生産馬を一口馬主で所有するクラブ法人の経営にも乗り出すなら、それは大きな武器になるのではないか。
そして、落札価格。
億超えが何頭もいて、昨年のファイネストシティの2020(3億円)をはじめ、2億円以上の馬を2年で5頭購入している。しかし、それらも、1億円台の落札馬が並ぶなかでたまたま上のほうになっただけで、マグロの初競りのように、打ち上げ花火的な意味合いのものではなかった。
結果として、打ち上げ花火としての役割を担ったのは、前述したドーブネだった。「馬主・藤田晋」の存在を、4億7010万円で落札した昨春の千葉サラブレッドセールで広く知らしめた。同馬が9月4日の札幌競馬で所有馬としての初勝利を挙げ、さらにオープン特別のききょうステークスを勝ち、朝日杯フューチュリティステークスに駒を進め、馬主初年度にしてGI初参戦を果たした。ダービートライアルのプリンシパルステークスでは4着に終わり、「競馬の祭典」への参戦はならなかったが、まだまだ活躍するだろう。
派手に見えるのは落札した合計金額が凄まじいからで、実際は、ドーブネを含む3歳世代の所有馬5頭がすべて勝ち上がっていることからもわかるように、良質な馬を淡々と揃え(それも比較的均等に)、着実に「藤田王国」を築き上げようとしている。