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《単独インタビュー》「絶対に走って力を証明したい」低迷するホンダで奮闘の中上貴晶が、MotoGPシート喪失報道の渦中で明かした本音 

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遠藤智

遠藤智Satoshi Endo

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photograph bySatoshi Endo

posted2022/07/19 06:00

《単独インタビュー》「絶対に走って力を証明したい」低迷するホンダで奮闘の中上貴晶が、MotoGPシート喪失報道の渦中で明かした本音<Number Web> photograph by Satoshi Endo

今季のマシンの難しさ、クラッシュの真相、シート争いのライバルと目される小椋藍への思いなどを、中上は率直に語った

「今年の藍君は安定しているし、波に乗っていいレースをしている。チャンピオン争いもしている。それに比べて僕はリザルトを出せていないという危機感もあるし、年齢的にも30歳になった。他のメーカー、他のチームでMotoGPを戦うというプランはないし、近い将来、僕に代わって藍君がMotoGPに参戦するというのは当然の流れだと思う。ただ、個人的には、いまのホンダのMotoGPマシンではなく、しっかり戦えるマシンになってから彼には乗ってもらいたい」

 続けて、今季のRC213Vの低迷について分析した。

「去年までは単純にリザルトを追いかけていた。だけど今年は、毎戦ゴールしたときに自分がベストを尽くし、力を出し切れたかを自問自答している。それにリザルトがついてくればうれしいけれど、いまは結果や数字を追えていないのが現実。現状では優勝、表彰台を狙うというのはミラクル。ホンダファミリーのポルに勝って、トップ6、7に入れればすごくいい。最近はホンダで1番で終われることが増えてきているけれど、それがどれだけ評価してもらえるのかは実際のところわからない。リザルトがすごく上だったらいいけれど、ホンダトップだといっても10位前後のリザルトじゃ素直には喜べない。

八方塞がり状態のマシン

 前半戦を振り返れば、開幕前のセパン(マレーシア)、マンダリカ(インドネシア)テストでは、上位を走ることができた。その時点では大きな問題は感じなかったし、いいバイクだなという印象もあった。でも、ウインターテストから前進することができなかった。マルクはイタリアGPまで走って(インドネシアとアルゼンチンは怪我のために欠場)、いろいろ新しいパーツがいっぱい投入されたが、進化しているとは思えなかった。元の状態に戻したり、去年のセッティングに戻したり……どんどん良くなって次に行くというよりは、行ったり来たりという状況だったと思う。

 とにかく今年のRC213Vはレースコンディションにすごく敏感で、難しく、扱いにくい。寒いときはいいのだけど、暑くなるとグリップしない、止まらない、曲がらない、スピニングで加速しないという八方ふさがりになる。そういう状況で無理をして転んでしまうことが多かった」

 コロナ禍が始まった2020年は、絶対王者のマルク・マルケスがMotoGPクラスのシーズン開幕戦となった第2戦スペインGPで転倒、右腕上腕を骨折した。それが躓きとなって、現在までホンダの低迷が続いている。

【次ページ】 サマーブレイクのアップデートに期待

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#中上貴晶
#小椋藍
#LCRホンダ・イデミツ

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