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脳内出血事故から4週間後に初優勝! Moto3の佐々木歩夢21歳を飛躍に導いたセルフマネージメント術《タイトル争いも視野に》
posted2022/07/02 06:00
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
シーズン前半戦最後のレースとなった第11戦オランダGPで、日本人選手が大活躍を見せた。最初のレースとなったMoto3クラスで佐々木歩夢が初優勝を達成。表彰台には立てなかったが、鈴木竜生もトップグループで首位争いに加わり僅差の4位でフィニッシュ。7台によって繰り広げられた熾烈な優勝争いを二人の日本人選手がリードした。
オランダGPが開催されるアッセンの最終セクションのシケインは、これまで多くのドラマが生まれ、絶好の撮影スポットとして知られる。レース展開が常に大集団となるMoto3クラスでは、スタートからこの最終シケインに大勢のカメラマンが集結する。
この大会、予選でPPを獲得したのはハスクバーナを駆る佐々木で、ニ番手にホンダの鈴木が続いた。そして、オープニングラップでは、この二人の日本人選手が集団をリードしてシケインに現れた。カメラマン仲間たちに「撮ったか? 最高の写真だな」と声を掛けられる。それから三十数分後のレース終盤になっても、佐々木と鈴木はレースの主導権を握る位置にいた。そしてラスト2周、力強い走りで後続の追撃を振り切った佐々木がトップでチェッカーフラッグを受けた。
ようやく勝てた“速い”日本人
2016年に、僕は「ようやく現われた“速い”日本人」というタイトルで歩夢のことを書いた。そこで本人が語った「17歳でグランプリに参戦する」という目標は達成されたが、マルク・マルケスを超える「19歳でのMotoGPチャンピオン」は果たされていない。それどころか、Moto3クラス6年目で21歳となり、歩夢は「こんなはずではなかった」と笑う。だが、去年今年は、やっと強くて速い走りを取り戻していた。
17~19年はホンダのマシンを走らせるチームから参戦。20~21年はKTMを走らせるチーム、今年はKTMのOEM(同じバイクで別ブランド)チームのハスクバーナから参戦している。歩夢は昨年トップグループで戦う常連に成長したが、チームを移籍した今年はウインターテストから好調で、チャンピオン争いを期待されていた。そして開幕戦カタールGPでは首位を独走もタイヤトラブルでリタイア。続くインドネシアGPは転倒リタイアして、いい流れは後退したかに見えたが、第3戦アルゼンチンGPで3位表彰台に立って復調。第7戦フランスGPまで、計3回表彰台に上る活躍を見せていた。