「僕はよくツーシーム（スプリット）がフォーカスされますけど、やっぱりピッチングの原点、軸は真っすぐだと思っていますし、キャンプのときから質にはこだわってきました。コーチやトレーナー、アナリストの方などいろいろな方の力を借りて、そこの部分において追い求めることはできたと思っています。球速も昨年とくらべアベレージは上がっていますし、またスピン量なども向上しているのはデータからも見て取れるので、そこも含め、自分の感覚を大事にしながら今後もアプローチしていければなって」

　明朗な口調、すっきりとした表情。思えばこんな感じで話をしてくれる山﨑と接するのは久しぶりのことだ。ルーキー時代から山﨑は「野球はメンタルのスポーツ」と語っていたが、この2年間、公私ともに苦しい経験をして越えてきたからこその心境の変化というのか、気持ちの部分でひと皮むけた感覚があるのだろうか。そう問うと、山﨑は「そうですね……」と宙を睨み黙考した後、ゆっくりと口を開いた。

「うん、僕にとってはそこが一番大きいかもしれませんね。今年ほど誰かのためにがんばりたいって強く思ったことはないですし、悔しい時間を過ごしてきたからこそ燃えたぎるものもある。その火を消さず、もっと大きな炎にしたいと思っているし、前に突き進みたいなって」

©Kiichi Matsumoto

　かつての紅顔の青年も今年で30歳になる。ブルペンでは年長であり、周囲を引っ張っていく役目も担っている。先日、プロ初セーブを挙げた若手の伊勢大夢は、目指しているクローザーとしての心得を「ヤスさんを近くで見て、肌で感じて学ばせてもらっています」と語っている。

僕も8年目ですから…

「伊勢の能力はブルペンでずっと見てきて計り知れないものだと感じていますし、彼次第では僕のポジションも危ういなと感じています。ただ活躍してくれれば素直にうれしいし、一緒にがんばってお互い刺激しあえたらって」

　7月14日にプロ初登板を果たした2年目の石川達也は、不安だった気持ちを山﨑の「すべてプラスの方向で考えれば大丈夫」という言葉で払拭することができたという。

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