草茂みベースボールの道白しBACK NUMBER
PL学園はなぜ“最強チーム”になったのか? 清原和博氏の始球式、コーチの配置転換…中日・立浪監督“賛否の決断”に宿る母校の教え
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph bySankei Shimbun
posted2022/07/07 11:01
7月2日の中日対阪神戦で清原和博氏が始球式を務めた。その実現に尽力したのは、同じPL学園OBの立浪和義監督だった(写真は今季キャンプ時)
そして立浪監督自身、在校時の厳しさを「まるで刑務所と一緒」とまで言いながら、PLのつながりを大切にしている。西武との交流戦が行われた5月には、清原さんや立浪監督の恩師である中村順司元監督が始球式を務めた。西武には松井稼頭央ヘッドコーチ、平石洋介打撃コーチら教え子がいる。立浪監督はそれを見越した上で依頼したのだ。
賛否ある決断の数々…その根源にあるもの
かつてのPL球児たちは、中年、初老の域に達しつつある。それなのに、今も強い連帯が保たれている。キャンプでの「復帰戦」の折にも触れたが、清原さんを招くにあたっては反対意見や慎重論もあった。立浪監督もプライベートでの支援に限定するやり方もできたはずだが、球団に掛け合い、招待することを決断した。
指揮官としても、攻守に精彩を欠いた京田陽太に交代を命じただけでなく、試合中に遠征先から名古屋へ帰らせた。中村紀洋打撃コーチを開幕から2ヵ月で二軍に配置転換した。外野手専念でスタートした根尾昂を遊撃手に再挑戦させた上で、投手登録へと変更した……。これらはすべて、立浪監督が矢継ぎ早に打った打開策であり人事案だ。もちろん目的はチームやその選手の成績が上向くことである。だが、手段としては万人が納得するものではないだろう。
周囲の批判を恐れて無難な道を選ぶのではなく、イバラだらけだとわかっていても自分が正しいと信じた道を行く。クセの強いエリート集団を、キャプテンとして束ねた高校時代と同様に、立浪監督には強いリーダーシップがある。しかし、現実には最下位で苦しんでいる。期待の石川昂弥は左膝前十字靱帯の手術で今シーズン絶望。4番のダヤン・ビシエド、エースの大野雄大、セットアッパーのジャリエル・ロドリゲス……。主力クラスがそろって戦列を離れた。八方ふさがり。そんなピンチにも立浪監督は「決断」から背を向けず、戦っている。言い換えれば、チームの力を誰よりも信じているはずだ。
巨大かつ一糸乱れぬアルプス席の人文字。全国屈指の規模を誇ったPL花火大会。そして逆転のPL。昭和の夏に欠かせぬ風景だった。「決断」から逃げず、勝利をつかんできたリーダーなら、きっと逆転する。そんな日が来ることをファンは待っている。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。