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「広島にとって大きな財産となる」“育成”のカープが初めて獲得したFA選手・秋山翔吾に寄せる期待とは《3年総額5億円》 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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posted2022/07/04 11:19

「広島にとって大きな財産となる」“育成”のカープが初めて獲得したFA選手・秋山翔吾に寄せる期待とは《3年総額5億円》<Number Web> photograph by KYODO

6月30日、マツダスタジアムの入団会見で「レギュラーを取る」と意気込みを語った秋山。背番号は「9」に決まった

 ただ、広島球団の狙いは、4年ぶりのクライマックスシリーズ出場が現実的な目標となった今季だけの補強ではない。

「来年以降も見据えて。チームにとってプラスになる。打撃のことや打席の中でのこととか、グラウンドだけじゃなく、ロッカーの中でもいろんな話をしてくれたらいい」

 交渉した鈴木球団本部長は、秋山を“野球小僧”と表現した。野球に対する考え方、取り組む姿勢をそのまま示してくれることが、チームにとってプラスになると確信している。それこそが、獲得の最大の理由だ。

 広島の外野陣には、高い能力を持ちながら殻を破りきれない選手が多い印象がある。だからこそ、秋山の加入が大きな刺激となり、現有戦力との相乗効果が期待できる。

 競争は当然、厳しくなる。若い選手にしてみれば、“本物”を見ることで研ぎ澄まされる感性や技術もあるだろう。その打撃技術やスタイル、思考は迎祐一郎打撃コーチも認めるところだ。

「どの打撃写真を見ても、やっぱりきれい。構え、トップの位置……。打ちそうな形をいたるところで見ている。確固たる技術がある。若手への影響は自然とあると思うし、僕らも吸収させてもらうことがあると思っている」

 ただの戦力として以上の効果がある。だからこそ、広島は獲得に名乗りを上げたのだ。

FA選手の図りしれぬ功績

 あまりFA戦線に参戦してこなかった広島だが、実績ある選手を招き入れてきた歴史はある。横浜(DeNA)から石井琢朗、巨人から豊田清、そして阪神から新井貴浩。彼らは実績と経験で戦力となっただけでなく、チームに多くのものを残していった。

 石井は小窪哲也(現内野守備・走塁コーチ)や菊池涼介に大きな影響を与え、豊田も今村猛ら若手投手陣の兄貴分となった。もともと広島で育った新井は広島の新たな伝統を鈴木、會澤ら後輩たちに伝承した。

「広島にとって大きな財産になる」

 獲得を表明したときの鈴木球団本部長の言葉だ。

 マネーゲームはしていない。条件提示は「5分くらい」で「あとは俺が一人でしゃべっていた」と鈴木球団本部長は笑う。広島に来てもらいたいという思いの丈をぶつけたことが、秋山の心を揺さぶった。

 劣勢と思われた争奪戦を広島が制したことは、獲得表明以上の驚きを与えた。日米通算1476本安打という実績を持つ秋山の加入が、広島にどんな化学反応を引き起こすのか。今季だけでなく、中長期的視点で見ていきたい。

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