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「広島にとって大きな財産となる」“育成”のカープが初めて獲得したFA選手・秋山翔吾に寄せる期待とは《3年総額5億円》
posted2022/07/04 11:19
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
KYODO
猛暑日が続く6月、広島がプロ野球の移籍市場の主役となった。西武時代に4度の最多安打を記録するなど、日本を代表するヒットメーカー秋山翔吾を、古巣・西武とソフトバンクによる争奪戦の末、獲得に成功したのだ。
今年4月に34歳となるも、レッズ退団後所属したパドレス傘下3Aエルパソでは、新型コロナウイルス感染というアクシデントに見舞われながら、打率.343、3本塁打、21打点、2盗塁、OPS.907の成績を残した。技術は決して衰えていない。
広島は西武、ソフトバンクに続いて、獲得の意思を明らかにした。これまでFA戦線に加わることは少なく、独自のドラフト戦略に基づき自前の選手を育てながらチームづくりをしてきただけに、驚きではあった。
昨オフの鈴木誠也のポスティングシステムによる米大リーグ移籍に伴い、昨秋のドラフトでは中村健人、末包昇大という即戦力の外野手を獲得した。彼らの成長を待ちつつ、ここまでは西川龍馬や上本崇司、野間峻祥などを中心に、外野3枠を固定できていない中でも何とかやりくりしてきた。
そんな広島が秋山争奪戦参戦を表明した理由は、どこにあるのだろう——。
“野球小僧”への大きな期待
広島には侍ジャパンで秋山とともに戦った菊池涼介や會澤翼、田中広輔がいる。さらに河田雄祐ヘッドコーチ兼外野守備・走塁コーチも西武時代に指導者としてともに戦った。プレーヤーとしての評価だけでなく、人間性や野球に対する姿勢など、映像や数字だけで測れない選手としての価値をチーム内から聞けたことも後押ししたに違いない。
思うように進展しない新外国人の調査も背景にあったと聞く。
今季広島の外国人野手は4番のライアン・マクブルーム、ただ1人。外国人投手は4人いるものの、今季も最大5人の外国人選手を登録できる中で枠を余らせている状況だった。
獲得を目指した選手と契約までに至らず、候補選手の絞り込みも難航していたという。そんな中、飛び込んできたのが秋山の「自由契約」報道だった。
「タイミング的に外国人の期限もそんなにあるわけではない。日本人である程度計算できる方がいいだろうなという思いはあった。(初めての環境下で)一からやらなくてもいいし、日本の環境を知っている」(鈴木清明球団本部長)
シーズン途中に未知数の外国人選手に託すより、日本で実績十分の秋山なら計算が立つ。