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脳内出血事故から4週間後に初優勝! Moto3の佐々木歩夢21歳を飛躍に導いたセルフマネージメント術《タイトル争いも視野に》
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2022/07/02 06:00
17年からフル参戦を開始して6シーズン目、キャリア通算95戦目にして初優勝を遂げた佐々木歩夢
歩夢の同世代には、現在Moto2クラスで大活躍の小椋藍、Moto3クラスでライバルとして戦う鳥羽海渡、山中琉聖、すでに引退した真崎一輝など、将来を期待させる優秀なライダーがたくさんいた。15歳前後から海外でレースをするという恵まれた環境にいても、ヨーロッパ中心のグランプリで本来の才能を遺憾なく発揮するには、歩夢のように5~6年かかることもあるのだろう。しかし、ホンダの育成ライダーとして世界グランプリでチャンスがもらえるのは、結果次第とはいえ、2年か3年である。
なかなかトップ10に入れなかったホンダ時代のリザルトでは難しい状況だったが、歩夢は自分をマネージメントしていく能力を持っていた。自分でチームと交渉することで自身のキャリアを伸ばし、才能を引き出したのだ。
歩夢はいま、来年はMoto2クラスにスイッチしたいと、いくつかのチームと交渉を続けている。元GPライダーの父・慎也さんが、「GPライダーになるためには英語を話せることが絶対条件」とインターナショナルスクールに通わせたことが、いまにつながっている。ホンダの育成シリーズから成長していく、という順当な出世コースを外れても、自ら道を切り拓いている。
チャンピオン争いも夢じゃない
「ようやく現われた“速い”日本人」と歩夢のことを書いてから7年目の初優勝。歩夢のもとに祝福に訪れた仲良しのMotoGPチャンピオン、ファビオ・クアルタラロの「アユム、やっと勝てたね。よく頑張った。これからもっと勝てるよ」という言葉がうれしかったという。
大怪我から復帰したこの2戦の4位&優勝で、歩夢は一気に総合4位に浮上し、首位と69ポイント差に迫った。
「残り9戦。後半戦は好きなサーキットが続くから、チャンピオン争いも夢じゃない」
そう言って自信を覗かせる歩夢は、後半戦、どんな戦いを見せてくれるのか。MotoGPチャンピオンもファンも、みんなが歩夢の走りに注目している。3年ぶりに開催される9月の日本GPでは、ぜひ日本のファンに勝利を目撃してもらいたい。
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