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元韓国代表GKチョン・ソンリョンが語る「若き日のソン・フンミン」…“川崎F勢”が席巻する日本代表戦は「弟が試合に出ているみたい(笑)」
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byAFLO
posted2022/07/01 11:03
2014年ブラジルW杯のロシア戦。若き日のソン・フンミン(当時21歳、後列右端)と韓国代表のゴールマウスを守ったチョン・ソンリョン
現在、森保ジャパンに川崎フロンターレ勢が多いのは、ご存知の通りである。
例えば先日のガーナ代表戦では、現在の所属選手である谷口彰悟と山根視来だけではなく、川島永嗣、三笘薫とトップチームに在籍経験のある選手もスタメンに名を連ねた。代表初ゴールを決めた久保建英も下部組織に在籍経験があるので、彼をカウントするならば先発だけで5人だ。さらに後半からは板倉滉、69分には田中碧も出場したことで、川崎に関係する選手が7人同時にピッチでプレーする時間帯も生まれた。
「弟が試合に出ているみたいな感覚です(笑)」
これだけ川崎色の濃かったゲームは例外だとしても、馴染みのある選手たちが日本代表としてピッチに立つ姿が増えているのは事実である。「今の日本代表をどう見ているのか」を尋ねると、優しい笑みを浮かべて話し始めた。
「彼らと同じチームだったので、なんでしょうね……。家族同然ですから、弟が試合に出ているみたいな感覚です(笑)。気持ちがいいものですよ、家族が代表に呼ばれて出ているわけですから。海外に出ても良いプレーを見せていますし、成長しています。フロンターレで培った能力を日本代表で発揮できているのは素晴らしいことだと思います」
谷口や山根だけではなく、田中、板倉、三笘、守田英正や旗手怜央といった、かつての同僚たちも含めて「家族」や「弟」と表現するところが彼らしい。それだけの関係性を築いてきたということなのだろう。
何より韓国代表時代は、日本とライバル関係だったはずである。
ただ今では、例えば清水エスパルスとの試合が終われば、権田修一には「代表に行っても応援しているよ」と話しかけ、談笑する間柄だという。
そして日の丸をつけて戦う家族や弟がいる日本代表についても、W杯本大会に向けてエールを口にすることに躊躇がない。インタビュー終盤、兄貴(ヒョンニム)のような優しい笑みを浮かべてこう言った。
「日本もすごくいい選手が多いですし、前線には速い選手もたくさんいます。組織的ですし、カタールでも良いプレーと良い結果が生まれると願っています。アジアのなかで、日本と韓国は最高のチームだと思っているので」
口ぶりは常に冷静だが、どこか熱さもにじませる。サッカー選手として最高峰の舞台に2度立ったことのある守護神の言葉には、その人間性が凝縮されていた。<#1、#2から続く>
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