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「日本人GKのレベル低下」は真実か? 川崎Fで進化を遂げた“韓流GKの代表格”チョン・ソンリョンの見解「僕は全くそう思わない」
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byGetty Images/Kiichi Matsumoto
posted2022/07/01 11:02
横浜F・マリノスの高丘陽平(左)や浦和レッズの西川周作(右)について、チョン・ソンリョンは「良いGK」「影響を受けている」と語った
「ビルドアップでは西川選手もそうですし、京都の上福元直人選手、鳥栖のパク・イルギュ選手もそうです。個人的にも、彼らのプレーから影響を受けていますよ」
ソンリョン自身の足元の技術は標準的だが、ミドルレンジのパス精度は年を追うごとに正確さが増している印象だ。もともとロングキックの飛距離には定評があったが、最近では中距離のピンポイントフィードをサイドバックに届け、等々力を沸かせることも増えてきている。そんな感想を伝えると、本人は少し嬉しそうに笑った。
「一カ所ではなく数カ所を見ることを意識していますし、いろんな場所を狙って蹴れるようにしています。たまにノッキングすることもありますが、僕からのパスを受けようという意識がみんな高いですね。綺麗なパスが通ると、サポーターも喜ぶと思いますし(笑)」
守備範囲やビルドアップはいまだ成長中
現在37歳。
バンディエラ・中村憲剛の引退後は、チーム最年長となった。ベテランとしてチームに落ち着きを与えながら、自分のプレースタイルをなお成長させ続けている。この貪欲な姿勢を高く評価しているのが、ほかならぬ鬼木達監督である。その向上心がチームに多大な影響を与えているのだと言う。
「ソンリョンに対してすごく思っているのは、フロンターレに来てからさらに伸びているということです。守備範囲がかなり広くなりましたし、ビルドアップもどんどん上手になっています。あの年齢でもいろんなことにチャレンジする姿勢はいろんな選手に見習ってほしい。要求して応えてくれれば、何歳になっても伸びるのだと思います」
来日当初は、ペナルティボックスを仕事場にするGKだった。190cmを超える大きな体躯はゴールを小さく見せ、シュートストップに抜群の冴えを見せる。勝負所の好守でチームに貢献するクラシックなタイプだった。
一方で現代サッカーのGKに求められる技術は、どんどんフィールドプレイヤーに近づきつつある。GKがペナルティボックスを飛び出して、高く設定された最終ラインの背後にある広大なスペースをスイーパーのようにカバーしていく。Jリーグでも、そうした俊敏なプレースタイルを持ち味にするGKは増えつつある。
現在の川崎はDFラインをコンパクトに保つ戦い方を採用しているが、スタイルの過渡期だった2019年は、ソンリョン自身も適応に苦しんだ過去がある。この年はルヴァンカップを獲得しているものの、決勝戦では新井章太がゴールマウスを守っている。多くのタイトル獲得に立ち会ってきたソンリョンが、唯一ピッチに立っていないファイナルだ。リーグ3連覇を逃し、一時的にレギュラーを奪われた同シーズンは自身の分岐点にもなったと振り返る。