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格闘技PRESSBACK NUMBER
《独占インタビュー》那須川天心が感じていた“武尊に勝ってもらいたい”という空気「こういう気持ちになったのは、堀口さんとの試合以来」
posted2022/06/23 17:02
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
THE MATCH 2022/Susumu Nagao
「いい人生ですよ。武尊選手との試合を最後に引退してもいいくらいの(笑)。相当“詰め詰め”ですよね」
武尊との“世紀の一戦”で、ダウンを奪った末に判定勝ちを収めた那須川天心。大会翌日の6月20日には一夜明け会見に臨み、その後、筆者にこれまでのキックボクサー人生を独白した。
世界の強豪が集結したトーナメントで優勝した。フロイド・メイウェザー・ジュニアとも拳を交わした。「1vs3」という異例の3人掛けにも挑んだ。いつもとは違うヒジ・ヒザありルールでムエタイの超強豪とも闘った。“詰め詰め”という表現は決してオーバーではない。
『THE MATCH 2022』(6月19日・東京ドーム)のリングに立つまでに、那須川は自分を育ててくれたRISEに軸足を置きつつ、RIZIN、KNOCK OUTと様々なリングに上がった。それだけ引く手あまただったという証左でもあるが、その期間は8年だったとあらためて指摘すると、那須川は「へぇ~」とまるで他人事のように驚いた。
「8年か。10年はやっていないんですね」
那須川天心にとっての「理想のヒーロー」とは?
5万6399人(主催者発表)が見つめる東京ドームのリングに上がるや、初代ウルトラマンの必殺技として知られるスペシウム光線のポーズをとったように、那須川は特撮スーパーヒーローへの憧れが強い。多くの日本生まれの男児にとって、「格闘」の原体験は特撮ヒーローvs怪獣だと思われる。そのまま特撮ヒーローに憧れるのは言わずもがなだ。
そんな那須川が格闘家を志したのは、幼少期に地上波で旧K-1を観たことがきっかけだった。スタート地点は多くの同世代の選手たちと同じだが、そこからの視点は明らかに違っていた。物心がついて以降は、誰かと自分を重ね合わせることや、憧れるようなことはなかったのだという。
那須川は「自分の中で理想のキックボクサー(像)というのはあまりなかった」と打ち明ける。
「何もないところから(自分を)作っていったという自負はあります」
理想とするヒーローは、これから成長していく自分自身だった。もちろん、格闘技をやり始めた当初は、全盛期には地上波3局で放送していたK-1の舞台に上がることを夢見た。
「でも、自分がプロになったとき、そういう舞台(地上波で放送するようなイベント)はなかった」