オリックスでは今、演じることなくありのままの自分でいられる。

「楽しんで、というか、純粋に野球ができる環境ではあると思います。まあ、もうこの歳なので、主力でバンバンやっているわけでもないですし、周りがそういう雰囲気なので、自然体で、というのは心がけています」

　移籍1年目だった昨年は、クローザーの平野佳寿が離脱していたシーズン序盤の9回に登板するなど、重要なイニングを任されることも多く、26試合に登板し2セーブ、5ホールドを記録。日本シリーズでも、最終戦となった第6戦の延長11回に登板し、ヤクルトの4番・村上宗隆を打ち取る見事なワンポイントリリーフを見せた。

　今年は、開幕から約2カ月半が経っての初登板。だが、まったく長くは感じなかったという。

「だって選手だけじゃないので。別に僕が中心になる必要もないですし」

山本由伸「能見さんに聞きに行きます」

　オリックスでは選手兼任コーチを務めている。マウンド以外で、能見がオリックスの投手陣に与えている影響は計り知れない。

　若手に対しても年の差を感じさせない接しやすい人柄と、鋭い観察力や適切な言葉掛けで、すぐに周囲の信頼をつかんだ。

　能見に尋ねても、いつも「僕は何もしてないですよ」とか「全然たいしたこと言ってませんよ」と謙遜するのだが、他の選手たちからいくらでも証言が出てくる。

　エースの山本由伸は昨年後半の15連勝中、こう語っていた。

能見にアドバイスを求めることも多いという山本由伸。6月18日西武戦ではノーヒットノーランを達成した（写真は2021年）　©︎Nanae Suzuki

「能見さんはフォームのことなどをすごくよく見てくれていて、的確な言葉をいただけるので、そこは本当に大きいですね。例えば、試合前にブルペンで力んでいる時は、『力むなよ』じゃなく、『落ち着いて』みたいな感じで、ちょっと遠回しなアドバイスをくれます。僕が気にしすぎないぐらいの、でもしっかり気づけるぐらいのアドバイスをくれるんです。とにかく的確だし助かるので、最近は僕からすごく求めていますね。試合中も、調子が悪い時は、ブルペンにいる能見さんに『どうですかね？』って聞きに行きます」

【次ページ】　宮城も田嶋も能見の“言葉”に救われる