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オリックスに来てから“笑顔”が増えた? 43歳能見篤史が明かす古巣・阪神への感謝と“特殊”な重圧「もう1人違う自分をつくっていた」 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph bySankei Shimbun

posted2022/06/20 06:00

オリックスに来てから“笑顔”が増えた? 43歳能見篤史が明かす古巣・阪神への感謝と“特殊”な重圧「もう1人違う自分をつくっていた」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

今シーズン初登板が古巣・阪神戦となった能見篤史(43歳)。名前がコールされると球場に大きな拍手が広がった

 昨年、高卒2年目で13勝を挙げ新人王を獲得した宮城大弥も、11勝目を挙げて以降1カ月以上勝てずに苦しんだ時期、能見の言葉に救われた。久しぶりに白星を挙げた試合後、こう感謝していた。

「勝てなくなって、悩み続けていたんですけど、悩んでもいい結果は出ないし、自分が苦しくなるだけだというのを、特に能見さんがおっしゃっていた。自分勝手に背負いこんでいる部分があったんですけど、吹っ切れました」

 能見は、「まだハタチですからね。『そんなん3年後に背負ってくれ』って、けなすように言いました」と笑っていた。

 5年目25歳の左腕・田嶋大樹も、昨年は「登板の日に近くにいてくれて、話を聞いてくれたり、ちゃんと答えてくれて、能見さんの存在がめちゃくちゃ大きかった」と話していた。

 田嶋はあまり他の選手と絡まず、練習中は1人でいることが多い。だが能見とは、話したり、一緒に歩いて練習から引きあげてくる姿を見かける。

「僕は過度に人と関わらないようにしているところがあります。でもちょっとつついて、僕のことを理解してくれそうだな、という人にはよく話します。そういう性格なんです。能見さんは、少ししゃべってみて、『あ、なんかちょっと世界を見る角度が人と違うな、面白いな』と思った。ちゃんと話を聞いてくれるし、理解してくれるし、納得のいく言葉をもらえる。話していて楽なので、いろいろとアドバイスをもらっています」

 能見は、「タジ(田嶋)はすごく純粋なので。もともと1人でいるタイプなんですが、なるべく1人にしないように、とは思っています」と気遣う。

 どんな選手にも、相手に合わせた寄り添い方で力を引き出す、懐の深さがうかがえる。

選手としての役割と、コーチとしての思い

 6月12日の阪神戦登板後、「この歳なので、主で投げるわけではないですけど、困った時に何か手助けができるように、いつでもいけますよという準備はしておかないといけない。しっかりと『あ、まだ投げられるな』と思ってもらえるということは大事だと思うので、そこはしっかり継続していきたい」と選手としての思いを語った。同時に、コーチとしての思いものぞかせた。

「(若い投手には)やっぱりつかみ取ってほしいというのもある。いいピッチャーは本当にいっぱいいるし、ちょっとしたことで劇的に変わるピッチャーも必ずいる。もっとできるんですけど、難しいんですよね、そのへんは」

 まだまだ能見がマウンドで投げる姿を見たい。だが若い投手たちが殻を破って躍動する姿の背後にも、能見の存在を感じとることができる。

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