「無重力を感じるリリースだと、正直どの球種であっても感覚がいいんです。球持ちが良かったり、捻ろうとしていたけど捻らずに済んだり、チェンジアップだったら抜けが良くなるなど相乗効果が生まれました。怖いぐらいに力を抜いてもボールが行くので、こんなに脱力してもいいんだって」

　力みが抜けるということは、結果的にスタミナにも影響する。

「僕はどうしても力投するタイプで、すべてにおいてギュッと力を込めてしまうのですが、この感覚があれば長いイニングを投げることにも繋がりますし、また同じ100球を投げるとしても、次回登板へのリカバリーがまったく違うというのもありますね」

　もともとポテンシャルの高い投手であることは周知の通りだが、キャリアを通じて故障や投球フォームを見失うこともあり厳しい局面に立たされることも少なくなかった。しかし、ここに来てようやく投手としての絶対的な“核”を手に入れたのかもしれない。

#ノーヒットノーラン を記念して投手陣で集合写真#交流戦#baystars pic.twitter.com/8Ds7jYw8f0

— 横浜DeNAベイスターズ (@ydb_yokohama) June 8, 2022

「本当の自分の力が問われるのは、これから先」

　ノーヒットノーランを達成しても、今永は「自分のなかでは、すごいことをやったと思わないようにしています。だからこそ満足する必要もない」と、マインドに力みはない。

　だが好事魔多し。ノーヒットノーラン後、初登板となった17日の阪神戦（甲子園）では、立ち上がりに制球が定まらず4失点すると、さらに大山悠輔に対しゾーン内にストレートが甘く入り2被弾を許してしまう。らしくないコントロールの乱れ。試合後「悔いが残る」と語った今永。まだまだ“新しい感覚”は自分のモノにはなっていないようだ。

　厳しい現実を突きつけられたが、とにかく大事なのは「これから」だと今永は顔を上げ力説する。

「本当の自分の力が問われるのは、これから先のプロ野球人生においてでしょうし、自分でもまだまだこんなもんじゃないと思っています。ただある意味、プロ野球人生も後半に入ってきて、新しい感覚を拾えたというのは自分にとってプラスであることは間違いない。もっとやらなきゃいけませんね」

　今永を縛り付ける“十字架”はどこにもない。ただ勝利のため、ファンや仲間たちの笑顔のため、今日も渾身のストレートを投げつづける。