格闘技PRESSBACK NUMBER
「なんでRIZIN出ないの?」と言われても…MMAファイター松嶋こよみが目指す頂点「UFCが世界最強だというのは明らかじゃないですか」
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byGantz Horie
posted2022/06/08 11:00
「ROAD TO UFC」に挑む日本人ファイターの松嶋こよみ
「UFCが世界最強だというのは明らかじゃないですか」
今、日本の多くのファイターが出場を熱望するRIZINには目もくれずに目指すUFCという舞台。松嶋はそのどこに魅力を感じているのだろうか。
「UFCが世界最強だというのは、もう明らかじゃないですか。じゃあ、『日本でチャンピオンです』と言ったところで、本当のチャンピオンはUFCにいることが選手なら誰でもわかっているのに、目指さないわけにはいかない。僕は自己表現より格闘技を追求していきたいタイプなので、そこに世界一があるのであれば、当然そこを目指すという感覚です」
ただ、世界最高峰=UFCチャンピオンまでの道のりは、あまりにも高く険しい。今年4月、“アジア最強”のUFCフェザー級ランキング4位(当時)、“コリアン・ゾンビ”ことジョン・チャンソンが、アレクサンダー・ヴォルカノフスキーの持つUFC世界フェザー級王座に挑戦したが、圧倒的な実力差を見せつけられた上で完敗を喫してしまった事実は、日本の選手、関係者、ファンにも大きな衝撃を与えた。しかし、松嶋は王者ヴォルカノフスキーといえども、決して倒せない相手ではないと語る。
「ヴォルカノフスキーとジョン・チャンソンの試合は、たしかに衝撃的でしたし、観ていて差も感じましたけど。今、UFCフェザー級は王者ヴォルカノフスキーと、マックス・ホロウェイ、ブライアン・オルテガの3人がズバ抜けていて、その下は団子状態だと思うんですよ。だから、『ROAD TO UFC』のトーナメントを一気に駆け上がって、まずはそこに食い込みたいですね。そのつもりで準備をしています。
また、僕がデビュー1年目にグアムのPXCという団体に上がっていた頃、ヴォルカノフスキーがそこのチャンピオンで、当時デビュー以来無敗の連勝中だった僕は、対戦する可能性もあったんです。そのヴォルカノフスキーが今のUFCチャンピオンですから、みんなが思っているほど差はないんじゃないかと思うし。現時点で差はあっても、何かを埋めれば届くところにあると思うので。その何かを埋めるのが大変なのはわかっていますけど、そこをどうにか自分の力で超えていきたいですね」
「ROAD TO UFC」は大きなチャンス
そのためにも「ROAD TO UFC」トーナメントは優勝が絶対条件だ。他の出場メンバーを松嶋はどう見ているのか。
「フェザー級でいうと、日本人ではSASUKE(佐須啓祐)選手が出て当然の選手だと思いますし。あとは韓国勢に強い選手が多いなという印象があります。とくに1回戦の相手であるホン・ジュニョン選手は、ローカルとはいえ韓国の2団体統一チャンピオンなので、しっかり闘わなければいけないと思っています。
でも、自分がいままで闘ってきた相手と比べて、そんなに気になる相手ではないし。ここで苦戦していたらトップに食い込むどころじゃないので。自分はアジアのトップでやってきた自負もありますし、その頃よりさらに強くなっている実感もあるので、他の選手と差を見せた上で勝ち抜きたいと思っていますね」
これまでUFCは『The Ultimate Fighter(通称TUF)』など、登竜門トーナメント優勝者には、本戦デビューからいきなりビッグチャンスを与える傾向にある。『ROAD TO UFC』は、すでにメジャーな番組である『TUF』とは違うが、通常のルーキーデビュー戦とは違うチャンスが与えられる可能性は高い。それだけに今大会は出場選手にとって「人生を変えるトーナメント」であると言える。
現在、日本人UFCファイターは男女合わせてわずか4人。これはMMA主要国で最も少ない部類に入る。しかし「ROAD TO UFC」は各階級で日本人選手が優勝候補に名を連ねており、半年後にはUFCファイターが倍増している可能性も充分ある。MMAの世界最高峰での日本の逆襲は、ここから始まるのだ。