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「なんでRIZIN出ないの?」と言われても…MMAファイター松嶋こよみが目指す頂点「UFCが世界最強だというのは明らかじゃないですか」
text by
堀江ガンツGantz Horie
photograph byGantz Horie
posted2022/06/08 11:00
「ROAD TO UFC」に挑む日本人ファイターの松嶋こよみ
「これを勝ち抜かなければ意味がない」
松嶋とONE Championshipとの契約は’21年6月までだったが、その後半年間はマッチアップ期間として他団体への出場はONEの了解を得る必要があった。そのため、’21年中はUFCへと繋がるような海外の試合出場を模索しながら、マッチアップ期間が明けた今年早々にも試合を行いたいと考えていたという。
「海外にはUFCへの登竜門となるフィーダーショーと呼ばれる団体がいくつかあるのですが、その筆頭であるLFA(Legacy Fighting Alliance)との話を進めていたもののなかなかまとまらなくて。他にもいろんな団体からお話はいただいたんですけど、UFCに繋がらないものはすべてお断りしていました。それで中東での試合なども考えていたんですけど、そんなタイミングで『ROAD TO UFC』の話を聞いたんです」
4月下旬に「ROAD TO UFC」開催がアナウンスされた際、メディアで報じられた「出場候補選手」の中に松嶋の名前も入っていた。しかし、関係者を通じてUFCにどれくらい可能性があるのか問い合わせてみると、UFCのマッチメーカー、ショーン・シェルビーから届いた返答は「最後の試合で負けているから、出場はない」というものだった。
UFCは世界各地のローカル団体のトップが集まる団体。ONEは世界でも有数の団体であり、そのトップ選手は実力的にはUFCファイターと遜色ないとされているが、対戦相手のレベルに関わらず前戦での黒星は、UFC参戦に大きな障害となってしまうのだ。
「一旦、『ROAD TO UFC』出場の可能性があると聞いたあと、ショーンからの『ない』という返答だったので、精神的に落ちたりはしたんですけど。それでも練習だけは関係なく続けていたら、欠場者が出たのか、UFCから正式なオファーが届いたんです。その時は、本当にうれしかったんですけど、まだようやくスタート地点に着けただけで、これを勝ち抜かなければ意味がないので。絶対に勝たなきゃいけないな、と思っています」
「なんでRIZIN出ないの?」の声もあるが…
これまで頑なにUFCにこだわり続けてきた松嶋だが、国内に目を向けると、フェザー級はRIZINでも朝倉未来を中心にもっとも盛り上がっている階級。松嶋の実績、実力ならばすぐにでも上位陣と対戦する可能性も考えられる。
一方で「ROAD TO UFC」はアジアのルーキーたちと横一線のトーナメントを行い、そこで3回勝って優勝することで初めてUFCとの正式契約を結べるというもの。まだそこがスタート地点なのだ。それでも日本のプロモーションで試合をしようという考えは、まったくと言っていいほどなかったという。
「今、RIZINはすごく盛り上がってるし、僕が一緒に練習したことがある選手や、試合をしたことがある選手も活躍してているので、自分を応援してくれる人たちからも『なんでRIZIN出ないの?』と、言われたりもしたんですよ。
でも、たとえRIZINでチャンピオンになっても、それでUFCに行けるかといえばそうではない。であれば、『ROAD TO UFC』は優勝すれば必ずUFCと契約できることがわかっているので、RIZINに出ながら模索するよりよっぽど現実的だし、じつはいちばんの近道じゃないかなと思っています。茨の道といえば茨の道かもしれないけど、今はお金がほしかったり有名になりたくて闘っているわけじゃないので、そこは揺らぐことはありませんでしたね」