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ジーコが語る「日本人ストライカーが直面する問題点」“期待のFW”に上田綺世を挙げた理由とは?
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byKASHIMA ANTLERS
posted2022/06/06 11:03
昨季限りでテクニカルディレクターを退任し、今季はクラブアドバイザーとしてブラジルから鹿島アントラーズをサポートするジーコ
――日本代表はもとより、勝つためには得点が必要ですが、現在の日本人ストライカーについて、何か変化を感じますか。
ジーコ いかにゴールを奪うか、ということに勤勉に取り組んできたように思う。とりわけ、多くのフォワードが技術の向上に力を入れてきたはずだ。
若い世代で言えば、上田綺世(鹿島アントラーズ)も、その1人だと思う。日々の練習でも熱心にシュート練習を繰り返している。それも、ただ蹴るのではなく、狙った場所へ正確に蹴ることを常に意識しながら取り組んでいる。それが決定力を含めた彼自身の成長につながっているのは確かだと思う。
ボールが転がる先を予測し、そこへ先回りする嗅覚のようなものはある種の特殊能力かもしれない。だが、コンスタントに点を取るためにはやはり技術の向上が不可欠。それも難しいものではなく、イージーなチャンスを確実に仕留めるためにだ。それが身について初めて結果が伴ってくる。
――現在の日本代表においても一番期待しているのは上田選手でしょうか。
ジーコ もちろん、そうだ(笑)。決定力のみならず、相手を背負いながらボールをキープする力もあり、フォワードとして必要な資質を備えている。それは鹿島のみならず、日本代表にとっても大きな力になり得るし、そうなることを心から願っている。
いや、実のところ、彼だけではない。日本代表のメンバーを含む、すべての日本人選手たちに期待している。
多くのJクラブが“助っ人”に依存している
――再びストライカーについて。ジーコさんはかつて「シュートとは歯磨きと同じ。つまり習慣化されていることが重要だ」と話していました。日本人の中で、その領域に達しているストライカーはいますか。
ジーコ 上田がそうだ。小林悠(川崎フロンターレ)もシュートが習慣化された選手だろう。また、昨シーズンは横浜F・マリノスに在籍し、J1リーグの得点王になった前田大然(セルティック=スコットランド)も飛躍的にシュート技術を向上させている。彼は確かJ2の松本山雅でキャリアをスタートさせたと記憶しているが、どんなカテゴリーにあっても、技術を磨いて成長することは可能だということの良き見本だ。
他方、懸念もある。日本人のフォワードが直面する問題点は、多くのJクラブが外国籍のストライカーに依存しやすく、出場機会を得にくいことだ。それが若いタレントの成長の妨げになっている面は否定しがたい。
鹿島を例に取れば、エヴェラウドが先発で使われていた時には、上田になかなか出番が回ってこなかった。川崎Fの小林もスタメンで使われていた時には得点王になるほどの力がありながら、現在はレアンドロ・ダミアンのサブに回っている。当然、それぞれチーム事情からそうなったわけだが、日本人ストライカーを育てたいのであれば、やはり相応のチャンスを与える必要があると思う。