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ジーコが語る「日本人ストライカーが直面する問題点」“期待のFW”に上田綺世を挙げた理由とは?
text by
北條聡Satoshi Hojo
photograph byKASHIMA ANTLERS
posted2022/06/06 11:03
昨季限りでテクニカルディレクターを退任し、今季はクラブアドバイザーとしてブラジルから鹿島アントラーズをサポートするジーコ
――現在の日本代表について、どんな印象を持っていますか。
ジーコ 私が知る限りにおいてだが、日本にとって、今回のワールドカップ・アジア最終予選は過去のそれと比べて最もタフなグループでの争いだったと思う。そこを勝ち抜いたのは力がある証拠。チームとして構築されているし、競争力もある。
また、森保一監督は各選手の特長をしっかりと把握し、それをどう生かすべきかを常に考えている。無理やり型にはめるようなことはしていない。人選や組み合わせを見ても、いかに選手たちを快適にプレーさせるか、という意図が伝わってくる。
最終予選の序盤で苦しんだのは、対戦相手に対するイメージと実像にズレがあったからではないか。2次予選の相手とはレベルの差が大きく、そのギャップを認識して、適切な対応を取るまでに相応の時間が必要だったのかもしれない。私の憶測にすぎないが。
ともあれ、重要なのはチーム全体で難しい状況を乗り越えたということ。目には見えないかもしれないが、ヨーロッパでプレーする選手たちの経験も確実に生かされていたはずだ。カタールでの本大会では、いかに平常心を保ち、それまで培ってきたモノを出し切るかがポイントになると思う。
――平常心とは具体的に。
ジーコ あらためて強調しておきたいことがある。もはやひと握りの強豪国が過去の実績やユニフォームの色だけで勝てる時代ではなくなった。純粋にピッチ上におけるバトルの優劣がそのまま勝敗に直結する。事実、わずか1年前にヨーロッパ王者になったイタリアは今回、ヨーロッパ予選(※プレーオフ)で敗退し、本大会に出場できない。それも2大会連続で――である。ひと昔前なら考えられないことだ。
本大会に出場するドイツもヨーロッパ予選で、格下と目される北マケドニアに敗れていた。スペインも同じヨーロッパ予選のホームゲームでギリシャと引き分けている。つまりは、手も足も出ないという絶対的な存在などではないということだ。
だから、日本もドイツやスペインを過度に恐れる必要はない。相手がどこであれ、ひるむことなく、平常心を保ち、自分たちのやるべきことに集中する。それが最も重要だ。
ピッチに立てば、11対11の戦いでしかない。ドイツやスペインは申し分のない相手であり、彼らを倒せば、大きくステップアップできる。ひるむことなく、自信をもって戦いに挑む。それができれば、自ずと結果はついてくるはずだ。
自信をもって向かってくる相手は怖い
――日本代表の監督を務めていた時代と比べて、大きく変わった点は何でしょうか。
ジーコ 私の見るところ、日本代表の進歩は個々のパーソナリティーにあると思う。多くの選手たちがヨーロッパへ渡り、高いレベルの戦いを経験することで確実に自信を深めてきた。それが代表チームのレベルを大きく引き上げたと思う。
だから、自分たちはできる、自分たちは勝てる――という強い気持ちで戦いに挑むべきだし、日本はその領域に到達したと思っている。もちろん、謙虚な姿勢も必要だが、いざ戦うとなったら話は別。自信をもって向かってくる相手ほど怖いものはない、ということを肝に銘じたほうがいい。