熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
「レアル・マドリーで久保建英(市場価格12億円)のはるか先にいる男」ロドリゴ21歳が“54億円の超新星”に上り詰めるまで
posted2022/06/04 17:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Daisuke Nakashima
ブラジル人アタッカーとしては、やや珍しいタイプだろう。
突出したスピード、驚異的なテクニック、奇想天外で創造的なプレー、といった誰にでもすぐにわかる華々しい武器があるわけではない。しかし、得点につながる効果的なプレーができて、大舞台に滅法強い。
5月4日に行なわれた欧州チャンピオンズリーグ(CL)準決勝第2レグは、彼が真骨頂を発揮した試合だった。
“白い巨人”は、第1レグでマンチェスター・シティに3-4で敗れ、この試合でも後半28分に先制を許す苦しい展開。残り20分足らずの間に少なくとも2点を返さなければ敗退、という極めて厳しい状況に追い込まれていた。
しかし、レアル・マドリーにはこの若者がいた。後半23分に投入されて右ウイングの位置に入ると後半45分、CFカリム・ベンゼマの左からの折り返しに猛然と走り込み、GKとCBに先んじて右足を合わせて同点。さらにその1分後、右からのクロスに高々と飛び上がり、頭で叩き込んで逆転。2試合の合計スコアを5-5とした。
そして、延長前半5分、彼の右からのクロスを受けようとしたベンゼマがペナルティエリア内で倒されてPK。これをベンゼマが決め、レアル・マドリーは奇跡的な逆転勝ちを収めて5月28日にパリで行なわれる決勝へ進んだ。
ロドリゴは、2得点に加え、ベンゼマのPK獲得を“アシスト”。途中出場ながら3得点すべてにからみ、チームの4季ぶりとなる決勝進出に決定的な役割を果たした。
試合後、「子供の頃から、レアル・マドリーでプレーして欧州CLを制覇するのが夢だった。次の試合で、ぜひともその夢をかなえたい」と満面の笑みで語った。
年齢、ポジションなどあらゆる意味で久保の競争相手
2001年1月生まれで、日本代表FW久保建英(レアル・マドリーからマジョルカへ期限付き移籍中)より5カ月だけ年上。身長174cmは、久保より1cm高いだけ。2019年7月のレアル・マドリー入団は、久保と全く同時期。両サイドのウイング、CFと前線ならどこでもプレーできるが、レアル・マドリーでは専ら右ウイングとして起用されており、このポジションは久保と被る。外国人枠を争う点も含め、あらゆる意味で久保の競争相手だ。
そして、これまでのところ、久保のかなり前を走っている。
久保が入団直後から他クラブへの期限付き移籍を繰り返し、なかなかレアル・マドリーへ戻れない理由の1つに彼の存在があるのは間違いない。