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ブラジル指揮官には「日本代表監督就任オファー」があった? 取材記者が知る「親日家の名将チッチ」〈ネイマールも涙した人間力〉
posted2022/06/04 17:01
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Takuya Sugiyama/JMPA
5月11日、ブラジル代表のチッチ監督が6月のアジア遠征(2日の韓国戦と6日の日本戦。11日にオーストラリアで行なわれる予定だったアルゼンチン戦は中止)の出場メンバー27人を発表した。
主力の大半が、欧州ビッグクラブのレギュラークラス。現時点のベストメンバーの市場価格合計が5億6900万ユーロ(約765億9000万円。平均約69億6000万円)で、現時点の日本のベストメンバーの市場価格合計6870万ユーロ(約92億5000万円。平均約8億4000万円)の約8.3倍というスター軍団である。
発表後の会見で、地元記者から
「なぜ若手ボランチ、ダニーロ(パルメイラス)を初招集したのか」
「欧州チャンピオンズリーグ決勝に出場した選手はいつチームに合流するのか」
「なぜ欧州強豪国と強化試合を組まなかったのか」
といった質問を受け、コーディネーターのジュニーニョ・パウリスタ(元ブラジル代表MF)らと共に「ダニーロは技術とスタミナがあり、状況判断も優れている」、「5月31日に合流する予定」、「あらゆる強豪国に試合を申し込んだが、先方の日程上の関係でことごとく不可能だった」などと答えた後、あるブラジル人記者から以下の質問を投げかけられた。
「ワールドカップ(W杯)で、少なくともグループステージ(GS)では対戦しないアジアの代表と、なぜ2度も戦う必要があるのか」
少々意地の悪い質問だが、これは多くの国民が疑問に思っている事柄でもある。
「日本は技術レベルが高く、非常に手強いチームだ」
これに対するチッチ監督の回答、反応に、少なからず驚かされた。
「先ほども説明したように、本当は欧州の強豪とも対戦したかったのだが……」と言いかけたのだが、突然、会見に出席していた日本人記者の方を向き、以下のように語りかけた。
「日本では、いつも素晴らしい歓迎を受けてきた。あなたの国の人々の礼儀正しさ、良識には、ある種の羨望すら覚える……」
そして、日本代表についても「技術レベルが高く、非常に手強いチームだ」と称賛した。
ブラジル代表監督ともなれば、その発言は世界中のメディア、ファンから注目され、瞬時に世界を駆け巡る。にもかかわらず、記者会見という公式の場で、質問とは直接関係のないことを滔々と述べたのである。