プロ野球PRESSBACK NUMBER
32歳で天国に旅立った炎のストッパー・津田恒実…親友・森脇コーチが今年も訪れた、あの場所「アイツと会話している気分になる」
text by
千葉ロッテマリーンズ取材班Chiba Lotte Marines
photograph byMakoto Kenmisaki/Chiba Lotte Marines
posted2022/05/30 11:07
広島時代に一緒にプレーした故・津田恒実(旧名・恒美)とロッテ森脇浩司ヘッドコーチ。亡き親友との時間を想い出しながら、後進の育成に尽力する
森脇ヘッドは還暦を過ぎ今年で62歳となる。毎日のように思い出される約束がある。
「還暦になったら、どこか2人で旅行に行こうと約束をしていた。どこに行っていたのかなあ」とマツダスタジアムの三塁側ベンチ前で空を見上げながら、ニヤリと笑った。そして言葉を続けた。
「炎のストッパーと言われたことは今でも語り草となっている。でもひとたびユニホームを脱げば気さくな男だった。繊細な男だった。たぶんマウンドでは負けるものかという強さをあえて見せて奮起していたのだと思う。『弱気は最大の敵』と書いたボールをいつも持ち歩いていた」
炎の男と過ごした濃密な日々は大切な財産となっている。そして今、マリーンズのヘッドコーチとしてユニホームに袖を通し選手たちに寄り添う指導で常勝軍団の礎作りに全力で取り組んでいる。若い選手たちには多くのファンが見守る中、グラウンドに立ってプレーできる幸せを感じて欲しいと願っている。
「お客さんの前でプレーできることに感謝を」
「なかなか元気であることの幸せに気づくことはない。普通であることのありがたみ。こうしてグラウンドで動けること自体が素晴らしい事。しんどい事もある。苦しい事、辛い事もある。でも一日一回、こうやってお客さんの前でプレーできることに感謝をして欲しい」
森脇ヘッドはノックを打ちながら、そのような想いを込める。選手たちを励ます。親友の想いを胸に還暦を過ぎた今も疲れた表情は一切見せずに積極的な指導を繰り返す。
「やって、やられてという戦いの日々ではある。ただ、このプロ野球のグラウンドはすごいチャンスで溢れている。一日一日、悔いのないようにやって欲しい。自分の心がどこかに向いてしまっている時も、気付けることはある。子供の時に夢だった野球を仕事にしていることをもう一度、思い出して欲しい」
今年も交流戦が始まった。マリーンズはマツダスタジアムでの3連戦を2勝1敗と勝ち越して終えると新幹線に乗り、広島を後にした。
今年のチームスローガンは「頂点を、つかむ。」。この目標を達成するために森脇ヘッドは全力で若い選手たちと向き合い、井口資仁監督をバックアップしている。またシーズンが終わった時に親友に最高の報告ができる日が来ることを願い、ノックバット片手にグラウンドに立つ。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。