対するアンチェロッティは、また別の手法をとる。象徴的だったのは、アディショナルタイム後半、ミリタンがピッチに腰を下ろして交代を求めたシーン。

　マルセロとクロースに交代策を相談するかのようなシーンが撮影できた。また得点直後のベンゼマにも交代させることを本人に告げ、確認を取るような姿も撮影していた。

ビニシウスら若い選手に引き継がれた成功体験

　シティの猛攻に耐えるイレブンを見つめるマドリーのベンチでは、各国でレジェンドとして尊敬を集める選手たちが、身を乗り出し戦況を見つめる。

　彼らの視線の先には、この試合を決定づけるまでの活躍は期待されていなかった、マドリーにおいては脇役とも呼べる11名の姿がある。

　クルトワ、ナチョ、バジェホ、カルバハル、メンディ、セバジョス、アセンシオ、カマビンガ、バスケス、バルベルデ、ロドリゴ。

　特にビニシウス、ロドリゴ、カマビンガと若い選手は、この成功体験を元に、新たな白い戦士として、マドリディスモを引きつぐ。

　この試合のヒーローとなったロドリゴは、兄弟のように過ごす、同郷のビニシウスと抱き合った。

　ピッチ上では、アンチェロッティとベンゼマが奇跡を称えあう。

　この勝利は自分たちだけでは成し遂げられなかったのは、選手たちが一番分かっている。昨季までのコロナによる無観客のスタジアムでは結末は違っていたかもしれない。

　120分の死闘の後、ゴール裏のサポーターから、逆サイドのサポーターの元まで、走り抜け、喜びを分かちあう姿は印象的だった。

＜#1（鎌田・長谷部のEL決勝を撮った）につづく＞

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