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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
なぜレアル・マドリーは「CLで異常に勝負強い」のか “完璧だったはず”のマンCを逆転…カメラマンが震えた「伝統と成功体験の継承」
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/05/28 11:03
大逆転劇に沸き上がるマドリーイレブン。通算14度目のCL制覇へ、あと1勝だ
ワールドクラスがそろう中盤の攻防
攻め込みたいマドリーだったが、中盤を自由自在に動き回るベルナルド・シウバを捕まえきることができない。
そんな中、覇気を見せたのが右のトップで起用されたバルベルデだった。豊富な運動量で、中盤の守備に奮闘しつつ、縦への力強い推進力でシティDFラインに綻びを作った。
しかし、今季高い決定力を見せている頼みの綱ベンゼマのシュートが枠に飛ばない。
卓越した世界トップクラスのミッドフィルダーたちの激しい一進一退の攻防が繰り広げられる。
そして迎えた73分、シティ右サイドのマフレズが豪快なシュートでゴールを奪った。シティ陣営の喜びに反比例するかのように、静まり返るスタジアム。
気を吐いたのが、マドリー下部組織からの生え抜きナチョ。選手だけでなく、スタジアム自体を鼓舞する。また直前の試合でリーガ優勝を決め、史上初の欧州5大リーグ全てでの優勝を成し遂げたアンチェロッティが右手で5、左手で3の指示を出す。サイドバック2枚を中盤に上げ、DFラインを2枚だけにする采配だった。
さらにマドリー中盤の要、モドリッチ、カゼミーロに交代し、アセンシオ、そして19歳のカマビンガを迷わず投入。
その諸刃の剣になり兼ねない采配は、正にマドリーにピンチを招いた。86分に右サイドを破られ、短い時間の中2度グリーリッシュに際どいシュートを打たれたほどだ。
一度はゴールに体を投げ出すように戻ったメンディがはじき出し、2度目は、クルトワの投げ出した足裏がかすかにボールを枠外へ弾き出した。
それでもこのシュートを防ごうが防がなかろうが、シティの勝ち抜けは決まっているように感じていた。
ホイッスルの瞬間、誰にピントを合わせているかに考えを巡らしていた。ただ、ピッチの上に立つ、白いユニホームを纏った選手たちは、わずかな可能性を諦めていなかった。
マドリーのユニホームを着たものは、諦めることは許されない。
マドリーの伝統が、数々のドラマを生み出してきた。
物語は、冒頭のシーンに戻る。
90分のロドリゴのゴールから、マドリーの歴史に新たなドラマが刻まれたのだ。
ペップとアンチェロッティの名将ぶりを感じる写真
ベンゼマのゴールで初めてリードを奪われたシティが攻めに出る。
ハーフタイムには、ペップを中心に輪ができる。マフレズに対して、かなり厳しい表情で指示を飛ばすシーンもあった。ペップの中にある理想のサッカーを具現化するための集団であることが見て取れる。世界最高クオリティーの選手たちを手中に収めるペップのカリスマ性を象徴する1枚だ。