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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
鎌田大地の号泣と“日の丸スパイク”に思い出す4年前の「カタールW杯には絶対出たいですよ」 長谷部誠とのEL優勝写真に“秘められた熱量”とは
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2022/05/28 11:02
EL制覇を成し遂げた鎌田大地。長谷部誠とともに偉業を成し遂げた
勝者が歓喜の輪を作ったのは、PKが行われたゴールサイド。
長谷部が天に向かい雄叫びをあげたその背景には、悲しみにくれるレンジャーズサポーターが映る。
その後、フランクフルトサポーターの前に移動したメンバーの中には、人目を憚らず号泣する鎌田の姿があった。
諦めずにやってきた自分のサッカーが初めて報われたと感じていた。
セビージャの街がドイツ、スコットランド人だらけに
“あるある”といえるかもしれない。
CLやELの決勝戦が行われる日、その都市のホテルや航空運賃は暴騰する。
この日のセビージャも同じだった。
ホテルだけでなく、ペンションやドミトリーに至るまですべての宿泊施設がほぼ満室だった。
通常往復130ユーロ前後のバルセロナーセビージャ間のフライトは、スペイン格安航空会社Vuelingのサイトで700ユーロを超えていた。
バルセロナに住むフリーランスカメラマンとしては、この舞台で戦う日本人選手はなんとしても撮影したい。飛行機ならば90分のところを、6時間かけてまだ比較的安価だった電車を押さえた。
バルセロナからも、通過駅のサラゴサやコルドバから随時ユニホームを纏った客が乗り込んできた。旅の半ばでカフェ車両を覗いてみると、今日のビールはすべて売り切れてしまったよと、売り子も呆れた表情を浮かべた。
スタジアムのキャパ4万5000人に対して、ドイツとスコットランドから乗り込んできたファンの数は15万人とも言われた。紫色が印象的なハカランダ並木を進むドイツ人をバックに自撮りするスコットランド人、交流を深める青組と白組。ベランダから呆れ顔でそれを撮影するスペイン人。
セビージャの街は、街路も、バルのテラス席も白か青のユニホームに占拠されているようだった。
スタジアム内部は正に彼らのものだった。売店の前にきれいに整列し、ビールを求める姿、また観客席では、キックオフまでのひとときも無駄にはできないと大きな声でチーム名を叫ぶ。
微笑みながらボールをセットした鎌田のスパイクには
21時、フランクフルトボール、微笑みながらボールをセットした鎌田によってキックオフされた。その足元には、「大地」の文字と日の丸が刺繍されたスパイクを纏っていた。
試合は序盤から負傷者が出るほどの激しさを伴う。そんな中、いつもと変わらず颯爽としたプレーぶりの鎌田にボールが入ると、2人のDFの間に滑り込むように、ボックス内に侵入。
しっかりミートすることはできなかったが、自力でシュートまで持ち込んだ。やっとスタジアムの周りを夕焼けが覆い始めた頃だった。
激しい攻防が続く中盤で、鎌田がボールをコントロールし、時間と落ち着きを与えようとする。
しかし鎌田にはマンマークがつき、やりにくそうな感じが出ていた前半は、これまで抜群のコンビネーションをみせてきたコスティッチとのプレーも限定されていた。