サニーブライアンは故障のためダービーを最後に引退したが、デビュー18年目だった大西の騎手人生は、ダービーを境に大きく変わった。ダービーがその年の4勝目だったのだが、以降は騎乗機会も勝ち鞍も面白いように増えていった。

「落ちついて乗れるようになりましたね。あの小回りの福島で、道中動かずにいる余裕を持てるようになったりと。ただ、その後、GIを含め、重賞もいくつか勝ちましたが、あのダービーほどの気迫を持って乗れたレースはひとつもなかった」

　あの一戦で「やり尽くした」と言う。

1997年サニーブライアン。父・ブライアンズタイム、母・サニースイフト。通算成績10戦4勝　©︎Sankei Shimbun

「自分が乗っていないときも、ダービーだけは毎年スタンドから見ていたんです。この目で見ないと、騎手としての何かがなくなってしまうように感じていたので」

　そうまで言う魅力と魔力にとりつかれ、味わい尽くしたダービージョッキーの表情は、すがすがしかった。

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