大西は自ら皐月賞の抽選会に出向き、抽選のガラガラを回した。「大外18番が出てくれ」と祈るような気持ちで回したら、18番の玉が出た。

「これで逃げて、自分の競馬ができる、と思いました。どの馬が強そうだとか、自分の馬の勝ち負けは考えなかった。中舘君に、『今度はぼくの馬が出ないから、ハナに行けるね』と言われました（笑）」

　皐月賞では、思惑どおり、1コーナーまで自分のリズムで走りながらハナに立つことができた。スローに落としたら、掛かった馬が上がって来たが、それを先に行かせて2番手に落ちつき、自分のペースでレースを進めた。

　向正面でハナを奪い返すと、3コーナー過ぎから仕掛けるというプランどおりの競馬をし、4～5馬身のリードを保ったまま直線へ。ゴール前で後続に詰め寄られたが、首差でしのぎ切った。勝ちタイムは2分2秒0。単勝51.8倍、11番人気での勝利だった。

1997年皐月賞を制したサニーブライアン　©︎Takuya Sugiyama

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「最後はバタバタになって、ギリギリだった。時計も遅かったし、この時点では、ダービーに向けて自信を持つことはできなかった。フロックだと言われましたが、正直、ぼくもそうかな、と思いました」

大西の読みを覆したサニーブライアン

　ところが、ダービーまでの7週間で、サニーブライアンは、いい意味で大西の読みを覆していく。調教で跨るたびに状態がよくなり、反応に鋭さが出て、毛艶もピカピカになっていった。しかし、田原成貴が乗る芦毛の素質馬スピードワールドと併せ馬をしたとき、大西は相手が並びかけてくるのを待っていたのだが、田原は動かず、単走のような追い切りになってしまった。

「田原さんは感覚で乗る人だし、大先輩だから、なぜ併せてこなかったのかは聞けませんでしたが、『お前の馬、すごく具合がいいな』と言っていました。ただ、うちの中尾銑治先生はスパルタだし、この馬はタフなので、ダービー前日の土曜日にもぼくが調教をすることになったんです。そのときの手応えがすごくて、全身で感じた風圧が、ジェットコースターで下るときのようだった。これなら、と思いましたね」

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