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「もう若い年齢でもないですし」DeNA嶺井博希が明かす危機感…30歳プロ9年目のキャッチャー観を変えた“ある投手からの一言”
posted2022/05/23 11:00
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
KYODO
プロ9年目、横浜DeNAベイスターズのキャッチャーである嶺井博希のパーソナルスローガンは、以前から次のような言葉だ。
“ORE FOR ALL”
んっ、と思う。“ORE”は“ONE”の誤植だろうか?
「あっ、それよく言われるんですよね」
嶺井はそう言うと笑った。“ORE”で間違いないそうだ。
「中学生のとき友だちに教えてもらって、すごくいいなって思ったんですよ。以来、大事にしている言葉なんです。当時すでに野球をやっていましたが、まだキャッチャーではありませんでした。けど、結果的にその言葉がキャッチャーというポジションや今の自分に繋がっていると思うんですよね」
投手やチームを支える“扇の要”。キャッチャーは苦労の絶えないポジションではあるが、嶺井はチームを勝利に導くためにグラウンドに立ち、出番がなければベンチの一番前に陣取り、状況を観察し必死に声を出す。
沖縄県出身。学生時代は沖縄尚学高校と亜細亜大学で日本一となり、攻守で活躍をしてきた勝者のメンタルの持ち主でもある。
俺は、みんなのために――。
プロ入り初の2軍キャンプ「自分をもう一度見つめ直す機会に」
今シーズンのスタートは、プロ入り初のファームキャンプだった。昨年9月に右肘のクリーニング手術をしたため調整が遅れていた。
「キャンプでは個人練習が多かったのですが、初めての経験も多く、自分をもう一度見つめ直すいい機会になりました。手術についてですか? 以前から右肘に違和感があって開幕に間に合わせるため、あのタイミングでやることを決断しました。ただ手術前は不安で、経験者のアドバイスなどを訊いて踏ん切りがついた感じなんです。今はまったく肘にストレスがなくいい方向に向かっているので、やって良かったなと思っていますよ」
肘へのストレスがなくなったことで当然スローイングはスムーズになり、フィールディングは良くなった。また他にもいい波及効果が見られるようになった。
チームの連敗脱出を後押しした「3年ぶりの2ラン本塁打」
開幕からDeNAの捕手陣は、打撃好調の戸柱恭孝を中心に、若手の山本祐大らがマスクをかぶることが多かったが、嶺井は限られた出番ながらキラリと光る存在感を見せてきた。