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「もう若い年齢でもないですし」DeNA嶺井博希が明かす危機感…30歳プロ9年目のキャッチャー観を変えた“ある投手からの一言”
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byKYODO
posted2022/05/23 11:00
DeNAの嶺井博希30歳。4日の中日戦(横浜)に3年ぶり本塁打でチームを連敗から救うなど、バッティングが好調だ
「けどやっぱり目指すところは“負けないキャッチャー”ですよね」
たしかに、それが一番の理想だろう。
昨季の大連敗もチームを救った「ORE FOR ALL」
6月で31歳になる。プロ生活も長くなりベテランの領域に達しつつある。現代野球においてキャッチャーというポジションの固定は難しいものがあるが、それでも正直、嶺井の出番は限られている。気持ちはいつでもチームに向いているが、一方で危機感があると嶺井は正直に言う。
「もう若い年齢でもないですし、結果を数字として残さなければこの世界では生き残れないし、発言力もなくなれば存在感もなくなってしまう。後悔がないよう日々を過ごしていますが、もっとチームの勝利に貢献していかないと」
あくまでも個人的な意見ではあるが、嶺井には投手やチームを変える力があるように思える。ストロングポイントを引き出す多面性のあるリードに、ここ一番での意外性のあるバッティング。3年ぶりの本塁打を放った際のベンチの盛り上がりは、チームに一体感を生むエネルギーに満ちていた。
昨季の序盤、DeNAが未曽有の大連敗を喫したときも、何かを変えなければとまず動いたのが嶺井だった。よく話をする石田に相談をしてキャプテンの佐野恵太とともに選手間ミーティングをすることを呼びかけた。開幕カードでマスクをかぶりチームに流れを作れなかったことによる自責の念からであったが、嶺井は“個の結果”と語りながらも気持ちは常にチームへ向いている。そして、まだまだ勝負はこれからだと嶺井は言うのだ。
「チームのことを考えつつ、自分自身の仕事をしっかりとやっていくしかない。そのために体調や技術、考え方を整理して、目の前を見据え、変わらぬモチベーションで挑んでいきたいと思います」
“ORE FOR ALL”
みんなの力になるために俺がいる――。
嶺井が自他ともに認める“負けないキャッチャー”になれたとき、この言葉は一番の輝きを放つことになるだろう。