市川高戦・試合前のシートノック、ユニフォーム姿の美しい捕手が、マウンドより向こうで軌道がグンとホップしているように見えるスローイングを繰り返す。

　メリハリの効いた動きと落ち着いた所作……こりゃあ「ドラフト」だなぁと思って、名前を確かめるのにメンバー表を見たら、2年生だったので、まず驚いた。

　試合が始まって、イニング間の二塁送球練習でも、1.8秒台でベースの上に持っていく。時折マスクが飛ぶほど首を振って投げるあたりが、子供っぽいというか、2年生らしい。だが、その「猛肩」となかなかの送球精度は2年生としては十分すぎるほど。これで、フットワークを使ったメカニズムが加わってきたら、故障の心配も減って、鬼に金棒となるはずだ。

　タイミングに苦しんでいた最初の2打席を一気に挽回した第3打席。バッティングでもっとビックリさせてくれた堀捕手。

　それまでの体の開きを修正するように、センター方向にこれでもか！とひっぱたいたライナー。突っ込んできた市川高・井上輝沙中堅手の頭上でグンとホップして見えた。そのライナーが、バックスクリーン前に達している間にダイヤモンドを駆け抜けた堀のスピードに、もう一度驚かされた。

　三塁を回って、へばった減速もなく、本塁に豪快に滑り込んだそのスライディングは“加速”すら感じさせて、悠々のランニングホームランとなった。

「50mだと6秒前半か、ちょうどぐらいだと思います」

　意外とフラットな調子で話す。

　訊いてみたいことがあった。3点リードの4回、先頭打者にいきなりボール2つ続いた場面で、タイムをとってマウンドに走った。

「前の回の攻撃で、ピッチャーがスクイズ失敗して力が抜けているのがわかったんで、気合いを入れに行きました」

　当たり前のようにサラッと言ってのけたから、「すげぇな……」と私はお腹の中でつぶやいてしまった。

　キャッチャーには感じてほしいんです……。常葉大菊川高・石岡監督が話していたまさにそのことを、およそ250キロ先の報徳学園・堀柊那が体現してみせた。

「本気で投げたらどんなボールを…」

◎2005年世代のニューカマー【4】坂井陽翔（投手・滝川二高・2年・186cm78kg・右投右打）

　驚きは、それだけではとどまらなかった。

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