野球のぼせもんBACK NUMBER
《ノーノー生観戦》前席のカップル、番記者、そして柳田悠岐もザワザワ…ホークス“東浜巨の97球”に福岡が燃えた夜「え、なんかすごい楽しい~」
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2022/05/13 11:03
ノーヒットノーランを達成し、喜ぶソフトバンク・東浜巨
ファンも、記者も、筆者も…大喜びのドーム内
東浜が投じた150キロ直球が、この日27人目の打者・金子(侑司)の胸元へ。思いっきり詰まらせた打球が、東浜から見て左側へ緩いライナーとなって飛んだ。グラブを出したが捕れない。俊足の金子だ。快挙を期待する歓声とマズいと思った悲鳴が入り混じる中、カバーに入っていた二塁手・三森大貴が素早くボールを処理して一塁へ送球。一塁塁審のアウトコールがいつも以上に力強く見えた。
それまで淡々と投げていた東浜が、大きな口を明けて笑い、両手を天に突き上げた。
スタンドのファンもみんな同じだった。若いカップルも大喜び。普段は斜に構える番記者たちも拍手を送っていた。筆者も声を上げて思わず喜んでしまった。
ノーヒットノーランの達成は、今年4月10日の佐々木朗希(ロッテ=完全試合)に次いで、プロ野球84人目・95度目。球団では南海時代の1943年5月26日別所昭(のちの毅彦)、2019年9月6日の千賀滉大に次いで3人目。加えて、東浜の投球数は97球だった。100球未満でノーヒットノーランは2006年9月16日山本昌(中日=97球)以来となり、パ・リーグでは1990年4月25日柴田保光(日本ハム=94球)以来、32年ぶり。そしてさらに、東浜は四球の走者を2人出したが、ともに次打者を併殺で仕留めて残塁が0だった。完全試合を除き、打者27人で終わったノーヒットノーランは史上4人目。快挙と共に珍しい記録もついてきた。
藤本監督が明かした舞台裏
試合後取材。東浜は笑いながらこう振り返った。
「みんな、いつもは試合中も話しかけてくるのに、全然声を掛けてこなくて。多分めちゃくちゃ意識をして流れを変えないように気を遣ってくれてたんでしょうね。逆に異様な雰囲気で、余計に緊張しちゃいましたけど(笑)」
ノーヒットノーランあるあるは、やはり健在なのだ。ただ、藤本博史監督はこんな舞台裏を明かしてくれた。