代表に選ばれた当初は、何度も怒られました。僕自身はそこまで怒られてきたキャラではないので、1プレーごとと言っていいぐらいの頻度で怒られることに、かなり戸惑いました。正直に言えばしょげていたんです。

　そんな僕を見て、羽生直剛さんや阿部勇樹らオシムさんの指導を受けた選手たちが、「ジェフにもそういう選手はいたよ。オシムさんが厳しいことを言うのも、憲剛ができると思っているからだよ」と声をかけてくれたのです。

　そうやって言われてみると、オシムさんは僕のミスを責めているのではなく、プレーが良くなるためのヒントを与えてくれていることに、改めて気づきました。たくさんの言葉をかけてもらい、そのすべてが僕を成長させてくれました。

「チームメイトを輝かせるために走れ」

　胸に刻まれた言葉を明かしてもらう。

　オシムさんらしい言葉が、中村氏のためにアレンジされていた。

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「チームのために走れ」という言葉は、胸に響きました。

オシムさんの指示を受ける中村憲剛氏　©Takuya Sugiyama

「自分がサッカーをやるためだけじゃなく、チームメイトを輝かせるために走れ。中村憲剛という選手に時間を作るために、周りの選手たちは走っている。同じように、チームメイトに時間を作るために走るんだ。そうすることでまた、自分に返ってくる」

　サッカー選手は、なぜ走るのか。走ることの「本質」を突いた言葉だと思うのです。

　オシムさんにそう言われて、走りたくなる自分がいました。「ここで走ったら『ブラボー！』でしょう？」と思うんです。実際に「ブラボー！」の声がかかったら、チームの流れが良くなる。オシムさんの「ブラボー！」を聞きたくて、どんどん積極的にプレーしている自分がいました。「考えて走る、チームのために走る」ことが自分の成長にリンクしている感覚を、ものすごく得られました。そうなったらまた、走りたくなりますよね。

　オシムさんに日本代表に呼ばれなかったら、いまの僕はなかった。

　自分で言うことではないですが、オシムさんの日本代表に選ばれたことで、成長曲線がグッと右肩上がりになりましたから。18歳ではなく、いろいろな経験を積んだ25歳のときに出会ったからこそ、大きな気づきを与えてもらえましたし、その気づきに順応することで成長し、そこから15年も現役を続けることができたと思うんです。

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