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30歳Vリーガーが“離島の教師”に転身…エリート街道を歩んできた“守護神”がバレー部員10人と目指す春高「一回、連れてってあげたい」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byItaru Chiba
posted2022/04/28 06:00
柳田将洋らと共にVリーグ優勝に貢献したサントリーサンバーズのリベロ鶴田大樹(30歳・右)。現役引退後は鹿児島県徳之島で教師として新しい道をスタートさせる
ファイナルのゴールデンセットを制して優勝を決めると、鶴田はコートに崩れ落ちて号泣した。
「最後だということを自分の中で全然意識していなかったんですけど、終わった瞬間、優勝できた喜びと、その後、『もうプレーすることはないんだ』という思いがわいてきて、みんなに『ありがとう!』って思いで、涙が止まらなくなりました。最後に優勝して引退できる選手がどれだけいるんだと考えたら、ほんの一握りなので、本当に自分は幸せ者だなと思います」
寂しさは?と聞くと、「寂しさはないです。本当にやりきったので」と晴れやかな笑顔を見せた。
これからは、遠く離れた島での新しい生活が始まる。「(新居に)荷物が届くまでに1週間もかかるから、急いで荷造りしないと」と苦笑した。
現在、樟南第二高校の女子バレー部員は10人。その中には、鶴田が初めてバレー教室に訪れた時、小学生で参加していた生徒もいる。
今後の目標は?と聞くと、鶴田は「うーん」と少し考えて言った。
「一回、春高に連れてってあげたいですね。何年かかるかわかんないですけど(笑)」
内に熱いものを秘めながら、いつも穏やかで懐が深い守護神だった。これからは教師として、指導者として、島の高校生と向き合う。生徒と一緒に駆け回り、ともに悩み、また深みを増していく鶴田の姿が目に浮かぶ。