プロ野球PRESSBACK NUMBER
「落合監督はちゃんと見てくれて…」元審判が感謝する“吉見一起の微妙なストライク判定”「おめえのせいじゃねえから、気にしないでやれ」
text by
佐々木昌信Masanobu Sasaki
photograph byTamon Matsuzono
posted2022/05/05 17:01
中日時代の落合博満監督
ダルビッシュ投手は当然1、2位を争うピッチャーですが、フォアボールで崩れていく試合があった。金子投手に関しては、フォアボールで崩れることがまずなかった。
いつだったか、金子投手がテレビで技術的なことを話していました。
「地面に左足を着いてから一瞬、上半身を浮き上がらせる」
その分だけ球離れが遅い。球持ちがいい。つまりタイミングがずれるということです。
「何じゃ、このピッチャーは……」と思ったワケ
先述したように、球審がタイミングを合わせづらいピッチャーです。球審が合わせづらいということは、バッターも合わせづらい、要するにいいピッチャーです。
ストレートも変化球も腕の振りが似ている。初めて金子投手を見たときに、「何じゃ、このピッチャーは……」という印象でしたから。
2013年に関しては「困ったら三振取りゃいいんだろう」みたいな絶好調。楽天が創設初優勝を遂げたあとの、いわゆる「消化試合」に金子千尋投手が先発しました。
「あれ、優勝決まったのに、まだ投げんの?」
「シーズン200奪三振の記録がかかってるんで、あと9個取るまで投げますから」
「シーズン200奪三振」を記録したピッチャーがいないわけではないですし、星野仙一監督がなぜ記録阻止にこだわったかは定かではありません。ただ、楽天打線は空振りしないよう、バットに当ててゴロでアウトになるという試合展開でした。それでも結局9個を取り切りました。
13年15勝200奪三振。14年16勝199奪三振。とにかく楽しそうに投げていた。セ・リーグではいないタイプだな、と。故障や契約のタイミングもあったのでしょうが、「メジャーリーグでの活躍を一番見てみたいな」と心から思ったピッチャーです。
吉見一起こそ「打たせて取るピッチャー」のお手本
当時パ・リーグを代表するのが金子千尋投手なら、セ・リーグを代表するのは吉見一起投手。日本球界の両巨頭でした。
2人とも高校時代に甲子園の土を踏んでいます。かたや金子投手が長野商高から社会人野球のトヨタ自動車を経て、2005年ドラフト1巡でオリックス入団。こなた1歳下の吉見投手は金光大阪高卒業後、同じトヨタ自動車を経て、06年ドラフト1巡で中日入り。
金子投手はプロ入り4年目の08年に初めて2ケタ勝利を挙げて主力にノシ上がったのですが、吉見投手も初めて2ケタ勝利を挙げたのがプロ入り3年目の08年でした。
金子投手同様、吉見投手もすべての球種においてストライクが取れました。ストレート、スライダー、カットボール、フォーク、シュート、チェンジアップ。吉見投手は手も足も出ない「空振り三振」というよりも「ゴロを打たせる天才」だと思います。簡単に追い込んで、ゴロの山を築く。だからダブルプレーが多かったのではないでしょうか。